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モーグル選手の魅力

2015年11月21日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先日、東京・両国で下山研朗君の結婚パーティーが行われた。下山君はモーグルの元ナショナルチームメンバーであり、ソルトレークシティー五輪の代表である。ナショナルチームで僕と重なることはなかったが、探究心旺盛で勢いのある新人だったと記憶している。その後も僕が主催するモーグルキャンプを手伝ってもらったり、彼の実家のペンションに泊めてもらったりと公私共に付き合いがある。
 下山君が招いた友人は僕もなじみの深い人たちばかりだった。附田雄剛、里谷多英、野田鉄平、上野修、西伸幸、西順子、水谷夏女、伊藤三姉妹(あづさ、みき、さつき)、冨田大輔。現役選手から元五輪選手まで。昔話に花が咲き、僕のパーティーでの悪乗りは有名で会は2次会まで盛り上がった。

 モーグルはフリースタイルスキーの中の一つの種目であり、フリースタイルスキーは1970年代初めに北米で競技会が開かれるようになったとされる。70年代に入るころといえば、米国ではヒッピー(制度に否定的で自由な風潮を求める運動)がはやっていた。フリースタイルスキーも、既存のアルペンやノルディックのような競技本位のスキーではなく、より自由を求めた人たちにより創り出された。
 しかし、皮肉にもフリースタイルスキーが競技として行われはじめると、これまであいまいだった事柄に一つずつ定義付けがなされるようになり、ルールは細分化され、そこに厳格な基準が設けられスポーツとして確立する。そして五輪種目を目指し、それがなされるとさらに競技性が増し、その度に新しいルールが設けられた。

 当初からフリースタイルスキーをしている人は、ルールに絡めとられた現在のモーグルからフリースタイルのエッセンスは失われたと思うかもしれない。しかし、現在のモーグルは信じられないレベルまで競技が高められている。精度の高いターン、高難度のエアは一度でもそれを間近で見た人を圧倒し魅了する。これはどの時代の選手も自己の限界を超え、競技を押し広げてきた結果である。
 僕がモーグルに魅力を感じるのは前線で戦うモーグル選手はいつもこうした際にあり、彼らから新たな独創性を求めるフリースタイルのスピリットを感じるからだ。今活躍する選手、これまで道を切り開いてきた元選手たちと楽しいひとときを過ごした

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