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モーグルはライフワーク
2016年2月20日日経新聞夕刊に掲載されたものです。
僕が最初にコブの中をスキーで滑る「モーグル」に出会ったのは11歳のときである。当時ミウラスノードルフィンズにいた五十嵐和哉さんはモーグルの日本チャンピオン、コブだらけの斜面を水が流れるように滑る、その姿に憧れてモーグルを始めた。
あれから35年。若い頃はナショナルチームの一員として国内外のライバルたちと戦った。競技引退後もモーグルの奥深さに魅せられ、行く先々のスキー場にコブ斜面があれば必ず挑んでいる。
モーグルにはスキーのあらゆる難しさが含まれているのではないかと思う。聖地のスキー滑降では平面的な動きも、コブが加わることによって立体的な動きが必要とされる。一つ一つのコブの大きさや形状が違い、それが次々と迫り対応しなければいけない。この中で理想のターンができるととてもうれしい。しかし、その半面、うまくいかなかったらとても悔しい。モーグル中では実感として「できた、できない」が単純にわかり、さらにその奥にまだ先があるのではないかという深遠な面白さがある。
こうした楽しさを伝えようと志賀高原焼額山スキー場で「VAAM 三浦豪太モーグルキャンプ」を開催して、今年14年目となった。おそらくこれは現存するモーグルキャンプで最長のものだろう。
人に教えることで気づくことが多くある。いろいろな滑りを見ながら長所と短所、その改善点を見つける作業はスキーそのものの理解を深める。これを同僚のコーチと話し合い、いろいろな角度で分析、意見をもらっている。自慢なのは、僕のキャンプのコーチたちはナショナルチームの現役や元選手、世界で戦っているコーチたちだということ。上達する過程にはいろいろな手法と表現があるのだな、と彼らが持つモーグル哲学にはいつも感嘆する。
こうした場は、僕のモーグルへの思いを理解し、協力をいただく企業の存在無しには続けられない。VAAMを提供する明治、スキー用具のK2ジャパンやゴールドウィン、専門誌のBravoSki、志賀高原焼額山スキー場のパトロールや圧雪の皆さん、キャンプを運営してくれる株式会社キャストなど多くの人の応援をもらっている。
このキャンプは参加者、コーチ、そしてそれを支えてくれる多くの人によって続けられてきた。今後もライフワークとしてモーグルに磨きをかけたい。
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