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変化の時代を生き抜く

2014年12月20日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先日、東京ビッグサイトで行われた「エコプロダクツ2014」で、スポーツと環境を考えるNPO法人グローバル・スポーツ・アライアンスのナビゲーターとして、地球温暖化について僕の経験を話す機会があった。

 父が75歳でエベレストに登頂した2年後、環境活動のためエベレストのキャンプ2まで行ったことがあった。この時の活動の中心はゴミ拾いだったが、現在、サガルマタ環境管理委員会(SPCC)によって厳密に管理されているため最近のゴミは少ない。しかし温暖化によって氷河が解け過去のゴミがいたる所から出てきていることに恐ろしさを感じた。
 僕たちがキャンプしていた横にあった高さ20㍍はあろうかという大きな氷河が僅か2年で10㍍以上後退していた。アフリカ、キリマンジャロでは僕が11歳のときに滑ったクレーター内の高さ数十㍍はあろうかという氷河は跡形も無く消えている。
 世界的に温暖化のサインが見られるとはいえ、最近、日本では爆弾低気圧が全国で記録的な吹雪と降雪量をもたらした。そして東京もその日は寒く温暖化について話しても歯切れが悪かった。

 昨年、ストックホルムで行われた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、第5次評価報告書では「温暖化に疑う余地が無い」とされた上で、温暖化によって膨大な質量を持つ海に熱エネルギーがたまることによって、これまで経験したことも無いような熱波、豪雨、干ばつ、強い台風、高波の頻度が高まる「極端化現象」が起きるとした。今まで直面したことがないような気候変動を僕たちや次の世代がこれから経験することになるだろう、とIPCCは予言している。

 そんな中、手に取ってみた本がある。植村直己氏と父の対談「男にとって冒険とは何か」である。その本では2人はこれまでの冒険談義(北極や南極、エベレスト滑降など)を無邪気な少年のようにユーモラスに語り合っている。父は「僕は冒険とか探検とかがこれから益々意味があると思う」とした上で、「南極に行くとか、北極を横断するのは自分で作り出した災害なんです。植村さん一人の後には35億人(当時の人口)の人類が生き延びる方法があるのではないか」と話していた。冒険、探検、アウトドアは大きな変化の時代を生き抜くための大きなヒントを与えてくれるのではないか。

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