見出し画像

ロープワークは山の友

2012年10月6日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 来年のエベレスト登山のため、定期的に事務所の屋上を使って、父やクライミング仲間とロープワークとクライミング練習を行っている。
 ロープワークは時代により変化するものと変わらないものとがあり、父、雄一郎にとって新しいロープワークは「六十の手習いならぬ八十の手習いだ」。
 ロープとは不思議なもので、それ自体はそれほど複雑ではない。しかし、使い方を間違うと複雑に絡み合い、場合によっては二度とほどけなくなってしまう。登山のロープワークとはロープの特性を生かして、なるべく単純に、結んだり、ほどいたり、用途に応じて摩擦をコントロールして自分や登山パートナーを制御し安全を確保するとことにある。

 ヒモの結び方の歴史は石器時代からあり(石おの、矢じりを結ぶ)、それぞれの民族の風習や生活様式によって異なった結び方が開発され、世界には数千種類以上の結び方があるともいわれている。登山ではその中でも20種類程度のロープワークが一般的な登山技術書で紹介されている。しかし僕が知っているのは、その中でもせいぜい7~8種類程度だ。反対にこの程度の種類の結び方を知っているだけで大概のことはできる。
 今年の夏キャンプでは、こうしたロープワークの技術を生かして、綱渡りやターザンロープをつくり、さっそうとその技術を披露してキャンプ隊長としての威厳を保つのに役立った。先日も身内が足にケガをしたので天井にロープを張り、滑車でつって、自由自在に足の高さを調整できるようにしてあげた。1本のロープと数種類の結び方を知っていれば実に多くの応用ができるのである。

 しかし、こうしたロープワークも体力や他の技術同様、しばらく使っていないと以外に忘れていたり、衰えていたりする。登山の中では微妙な結び方の違いや認識不足でも、命取りになる可能性があるため、定期的にロープワークを行い、お互いに確認しながらすばやく確実に出来るようにする。
 登山ではいろいろな場面を想定しなければいけない。暗闇の中、手袋をつけた状態での操作、片手しか使えない状況など、最悪の状況を想定して練習を行う。それにしても暑い夏空の下、冬の装備でロープを使って壁をよじ登る姿を見て、よく泥棒と間違われ通報されなかったものだ。

ブログ村ランキングに登録中!
記事の内容が良かったら、ぜひ👉PUSHして応援してください^^

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?