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義足アスリートの戦い

2013年2月9日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先日、毎年キッズキャンプを行っている主催元、サントリーのCSR推進本部の担当者から「とぶ!夢に向かって」という本が送られてきた。昨年、行われたロンドン・パラリンピック、陸上競技走り幅跳び代表の佐藤真海(まみ)さんの子供向けに書かれた自伝だ。本には「うちの部署にこんな面白いのがいます」と担当者からの言葉が添えられていた。
 本を手に取り読んでみた。佐藤さんは早大2年の頃、チアリーダーとして活躍、希望に満ちていた時に突然、骨肉腫を宣告された。片足を失いながらも、義足をつけて陸上競技、走り幅跳びに再び可能性を見出した。パラリンピックに挑む女性アスリートの姿が本の中に鮮やかに描かれていた。
 ぜひ佐藤さんに会いたいとキッズキャンプ担当者にお願いし、先日それが実現した。

 彼女がパラリンピックを目指したきっかけは、東京都障害者総合スポーツセンターで競技義肢装具士の第一人者である臼井二美男氏と出会ったことだった。そこで彼女はカーボン製のスポーツ義足を試してみた。ぎこちなくも足を踏み出してみた。再び「走る」ことができる、その時、感じた風がなんとも心地よかったという。
 そして陸上競技の中でも難しいロングジャンプに挑んでみた。ロングジャンプは助走、踏み切り、空中姿勢、着地が合って初めてうまくいく。その複雑さと奥深さにのめり込んでいった。競技を始めて1年後、義足のアスリートとして日本人女性初のパラリンピックの代表となり、これまで3度のパラリンピックに出場している。

 彼女は毎日、夕方仕事を終えた後、自ら練習場の整備を行い、夜遅くまで練習に打ち込んでいる。パレリンピック選手の多くは国から出る強化費等もわずかなもので、練習場や遠征費用は自分で負担しなければならない。現在では会社の理解と支援を得られ、仕事と競技生活を両立しているが、先駆者としてこうした練習や競技の環境作りが道を作ることになる。
 彼女は病気と闘ってから「今出来ることは何かと常に考え、あらゆることに出し惜しみしなくなった」という。現在、競技力を高めながら、後進の指導や子供たち向けのワークショップを開き、スポーツを通じて生きる喜びを感じることを伝える役割も担っている。

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