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口腔ケアで災い防ぐ

2013年1月19日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 正月も明けて早々、三浦雄一郎はみのもんたさんが司会を務める「朝ズバッ!」に出演した。2013年は80歳でのエベレスト挑戦の年である。反省を振り返りながらエベレストへの意気込みや健康法などについて語った。
 その中で父は祖父から伝わる三浦流「口開け運動」を行った。口開け運動とは口を大きく開けて舌を下、横に動かす運動であり、舌と顎の筋肉を動員して顔や頭への血行を促す。
 この時、たまたま口腔ケアが専門である牛山京子先生がテレビを見ていた。父が大きく突き出した舌が白くなっていることを心配して、共通の友人を通じて連絡をいただいた。

 広島大歯学部非常勤講師である牛山先生は、在宅訪問口腔ケアを中心に27年間活動している。口は生きる喜びの一つである食事を支え、病気を防ぎ、コミュニケーションを豊かにする、として医療との連携を呼びかけ、講演会、研修活動、執筆や口腔ケアの開発に精力的に取り組んでいる。東日本大震災の際も歯科衛生士として被災者を支援した。
 口の中には数百種類の細菌がうごめいている。これらが数億単位で歯垢や歯肉溝、舌、口腔粘膜等に付着している。健康な人であれば1日に1㍑もの分泌量があり強力な殺菌能力を有する唾液により、過剰に繁殖することは無い。が、高齢者や疾患を持っている患者らは菌に対する抵抗が落ちてしまい、多くの病気の原因になる。

 父の舌の白くなっていた部分は、舌苔(ぜったい)と言って舌の表層についた多くの菌やカビである。通常これらも大した悪さはしない。しかし、父が心臓のカテーテル手術を行うことを番組で知り、あわててコンタクトをとってくれた。免疫力が落ちていると、普通だったら問題の無い菌でも気管を通じて肺に至り肺炎になる可能性が高い。そのため手術自体は成功しても術後、口腔ケアが行き届かなかったことで、違う病気が重篤化することがある。

 父は牛山先生から歯の磨き方、舌のブラッシング、うがいの仕方を教わり、見ている僕にもとても良い勉強になった。「口は災いの元」ということわざがある。言葉の使い方には気をつけようという戒めであるが、衛生面でも多くの災いがあるのだなと、日々の歯磨きの大切さを考えた。

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