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キャンプの学び

2013年8月31日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 今年もYMCA、サントリーと共同で開催する「余島(香川県)アドベンチャーキャンプ」に行ってきた。
 余島から子供たちとカヤックをこいで葛島を目指したが、瀬戸内海は気圧の谷間に入り込み、前線が停滞。3日間、大雨、雷、風と厳しい状況を迫られた。そのため出発が大幅に遅れることになった。このキャンプは「アドベンチャー」の冠があるので、いかにこうした待機の時間を過ごすのかが子供にとって絶好の学びの場となると思い、僕は最近のエベレスト登頂のビデオを交えて話すことにした。

 エベレストに同行した平出和也カメラマンが撮った映像は素晴らしい。通常のカメラに加え、小型カメラや無線操縦のヘリコプターを駆使して、アイスフォールのクレバスを渡る危ういハシゴやローツェフェースの壁を迫力あるアングルで捉えている。子供たちは目を輝かせて映像を見つめていた。
 終わると子供たちは我先に手を挙げる。クレパスの隙間は落ちたらどれくらいあるか、何日くらいかけて登るの、荷物はどれくらい、高山病って何?
 次から次へと質問が飛び交った。
 子供たちの興味は尽きず、翌日天気が回復した後、カヤックを漕いでいる間も、ご飯を食べている時もエベレストから個人的なことまで聞かれた。

 キャンプ最後に子供たちとリーダーたちが火を囲み、今回のキャンプで得た経験や感じたことを話す。その中の一人が「普段、僕は学校で絶対に手を挙げないのだけど、豪太隊長のエベレストの話の時、どうしても聞きたいことがあり手を挙げることができました」。
とてもうれしくなった。僕たちが目指しているキャンプは普段子供たちが学校でできない体験をしたり話をすることを目指している。

 父、雄一郎も小学生の時、学校についていけず不登校気味であった。そんな時、祖父が蔵王や八甲田の山々に連れて行き大人に交じってスキーや山登りをさせた。そこに広がる大自然を見つめ「世界には学校よりももっと大きな世界が広がっているのだ」と父は考えはじめ、大きな自信につながったという。
 子供は勇気を振り絞って「どうしても聞きたい」と手を挙げたのだろう。これは彼にとって大きな変化であったはずだ。これからも一人一人の心に残るようなキャンプを行っていきたい。

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