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生が際立つガラパゴス
2015年10月10日日経新聞夕刊に掲載されたものです。
BS朝日の「地球紀行」と言う番組のリポーターでガラパゴス諸島に行く機会があった。この島は、生き物好きの僕にとって憧れであり、いつか行ってみたいところであった。
エクアドル本土から太平洋沖合約1000キロに位置する19の大きな島々と100ほどの小さな島々からなる。土着した生物は南米本土から隔絶されている為、鳥のように飛んできたか、海流に流されてたどり着いたものばかり。数百万年と言う年月の間に本土に入る種類とはたもとを分かち、独特の発展を遂げた。
人より大きなゾウガメ、海を泳ぐウミイグアナ、赤道上にもかかわらず南極から寒流に乗ってきたペンギン、求愛に愛らしいダンスを踊るアオアシカツオドリ。見るものすべてが珍しく興奮の連続だった。
この島に来て、180年前、南半球を巡った調査船ビーグル号に乗ってきたチャールズ・ダーウィンが現在の進化論の基礎と言える「種の起源」のヒントを得たのは容易に想像ができる。ダーウィンの時代キリスト教の影響力が強かった「創造説」(神が生物を含めすべてのものを創造した)が主流であった。しかし、ビーグル号の旅に出て5年、彼は多種多様な生物種、そして化石による多くの絶滅種を目の当たりにする。そして進化論の基本である「自然選択」と言う考えに至る。
自然選択とは同種の生物の間でも微妙な差があるとするもので、こうした微妙な差の結果、より環境に適応している固体はそこ環境か出より多くの子孫を残すと考えた。環境に対応できないものはいずれ淘汰される。小さな変化は世代を重ねていくうちに大きくなり、いずれ新しい種となって枝分かれしていく―――というのが彼が唱えた進化論の根幹である。
さて、この様な生物種の変化について語るとき、大前提になることがある。それは厳しい環境である。ガラパゴス諸島は目立った天敵がいなく、多くの生物が共存している楽園に見える。しかし、実は生物がすむ環境として、これ以上ないほど過酷だ。孤立している島々は、それぞれ火山岩からなり、雨が降ってもすぐしみ込んでしまう。ほとんどの島では生命の源とも言える水分に乏しく、生態系の底辺を支える植生も限られている。この島の生物がこれほど特異な進化を遂げたのは、その苛酷な環境の裏返しだ。死が身近にあるからこそ、生が際立つのである。
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