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自然の猛威 まざまざと

2014年10月4日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 9月27日、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山が突然噴火した。山頂付近にいた一般の登山者が命がけで撮影した映像によって噴火当時のすさまじさが伝わってきた。一瞬のうちに多くの犠牲者を出し、戦後、最悪の火山災害となった。
 御嶽山は霊山として知られ、日本百名山ということもあり、紅葉シーズンは多くの登山者が訪れる。噴火が起きたのは午前11時52分、まさに登山者が頂上で最高の景色を楽しむ時間帯であった。

 今回の御嶽山の噴火は予知が難しい水蒸気爆発であったといわれるが、登山者にはまさに不意打ちで避難も厳しかっただろう。僕も登山をする時は火山噴火に遭遇するとはほとんど考えていない。
 しかし、110もの活火山を抱える火山列島である日本で登山を続けるなら、今後、その可能性についても考えて登るべきだろうと思う。
 僕は慌てて、父のエベレスト登山をサポートしてもらった認定国際山岳医である大城和恵先生に連絡を取り、もし今回のような噴火に遭遇した場合の体を守る方法について聞いてみた。

 大城先生は以下の方法を具体的に話してくれた。
 「少しでも噴火口から遠ざかることはもちろん、この時、風向きを確認して風上方向に下山する。隠れるのならくぼ地を避ける。こうした噴火は空気よりも比重の重い有毒の硫化水素などを含む場合が多く、くぼ地などにたまりやすい。タオルで口を覆い、粒子が細かく気管や肺を傷つけ易い火山灰や暑い空気を直接吸わないようにする。灰は光を通さないので周りが一気に暗くなる可能性がある。そのためできればヘッドランプをいつでも取り出せるようにしておいた方が良い」
 「頭を守るための厚手の帽子やザックの雨蓋で頭をカバーする。一部報道であるようなザックで頭をカバーしても背中に噴石が当たる。ザック本体は背中の防御として使う方がよい。シェルターは、よほどしっかりしたコンクリート製でない限り、噴石によってつぶれてしまう可能性がある。シェルターの強度を見て、もし弱いようだったら一時避難として次の動きを考える」などのアドバイスをいただいた。

 災害は突然降りかかる。自然に親しむだけでなく自然を畏怖し、警戒する心を備えたい。今回の災害は登山家としての僕に重要な教訓となるだろう。

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