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遊びこそスキーの原点

2014年3月22日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 昨年から僕は「NPO法人ナスターレース協会」の理事長となった。
 ナスターレースとは、米国生まれの「National Standard Race」の略で、アルペンスキーの全国標準レースシステムのことだ。毎年シーズンの序盤にナショナルチームレベルの選手(ナショナルペースセッター)と公認のペースセッターが集まり、レースを行う。この時のナショナルペースセッターとのタイム差が公認ペースセッターの基本ポイントとなり、全国各地のレースに持ち帰る。レースでは参加者と公認ペースセッターのタイム差によって、その人の「ナスターポイント」が決まる。
 つまり自分と日本代表レベルとのタイム差や友達同士でナスターポイントをもとに簡単に実力を比べることができるというわけだ。

 現在、ナスターレースは小学生以下の育成に取り組んでいる。ナスターレースポイントを獲得した子供たちは、ナスターレース協会が主催する「チャンピオンシップ(東北地方)」「ジャパンカップ(関東)」「ドリームカップ(北海道)」の上位に入賞すると、なんとカナダのウィスラーで行われるFIS(国際スキー連盟)大会の出場権を手に入れることができる。そのためこれらの国内大会は世界を見るきっかけとして絶好のチャンスとなる。

 先日、僕は苗場の「ジャパンカップ」の模様を見てきた。全国大会で活躍する小中学生がカナダへの切符を手に入れるため真剣に取り組んでいた。
 この時、ゲストレーサーの木村公宣さんと次世代の育成について話した。木村さんは日本を代表するアルペンレーサーでアルベールビル五輪からソルトレーク五輪大会まで4大会連続出場している。日本のアルペンスキー選手は16歳以下までは華々しい成績を収めるが、その後、伸び悩む。理由はチルドレン(14歳以下)の選手があまりにもアルペンスキーに特化してしまう傾向にあるからだ。
 それよりも子供の頃はもっとスキーで遊ぶことによって、アルペン技術も伸びるだろうし、アルペンで伸び悩んでもスキーの他のフィールドで活躍できる可能性が広がる。実際、今回ソチ五輪で活躍したフリースタイル選手の多くはアルペン、モーグル、ハーフパイプ、スロープスタイルの経験を積んでいる。遊びこそがスキーの原点、自由な発想が次世代の活躍に求められると意見は一致した。

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