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EMS、筋肉強化に力

2012年12月8日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先日、父雄一郎と京都大学大学院人間・環境学研究科の森谷敏夫教授が雑誌で対談した。森谷教授は、認知行動科学、身体機能論等を専門としている。教べんをとる傍ら、生活習慣病・肥満改善、運動処方箋や運動生理学を基礎としたソフト・ハードウエアの開発を行っている。

 対談後、僕も含めて昼食をとる機会があった。僕は大学で運動生理学を専攻していたことから、運動生理学の最新情報や森谷教授の最近の研究に興味が尽きなかった。その中で特に関心を抱いたのが森谷教授の手がけている最新のEMS(エレクトリカル・マッスル・スティミュレーション)装置だ。
 通常、人が筋肉を動かすとき、その部位を動かす命令を脳から電気信号として発信して脊髄の随意神経から末端の神経を経て筋肉が収縮する。それに対してEMSは電極を外部から取り付け、皮膚を通して直接筋肉に電気を流すことによって筋肉収縮を促す。そのメリットは運動する意思とは関係なく、電極を取り付けた部位の周辺の筋肉を動かし、筋肉の肥大化や代謝促進が行われることだ。

 父は先日、茨城の土浦協同病院で不整脈の手術を行ったばかりで、術後の経過観察のため、あまり激しい運動はできない。そのため3か月後にエベレストに向かうにもかかわらず、トレーニングが制限されてしまうというジレンマに陥っていた。
 父がEMSを使うことによって、心臓に負担を掛けずに代謝、筋力、筋肉量の低下を抑えることができるのではないかと考え、早速、京都大学にある森谷先生の研究室に父と向かった。
 森谷教授の開発したEMSを実際に手に取ってみた。小型CDプレーヤーほどの大きさの本体にコードが出ていて、腹、大腿部、足首用の柔らかい繊維バンドに接続できるようになっている。装置の特徴は神経筋機能論に基づいた筋収縮を効果的に行うことにある。接着面を大きくすることで筋収縮に適した低周波が体に負担や痛みを伴わないように開発されている。

 用途は広く、ケガからのリハビリ、寝たきりの高齢者や脊髄損傷による筋委縮の緩和、糖尿病や肥満改善に役立てられる。強度によってはかなりの運動をしたのと同等の負荷がかかる感覚があり、登山のトレーニングにも十分使える手ごたえがあった。必要な時にこうして巡り合えたことに感謝したい。

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