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応用力に通じる「基礎」

2012年3月17日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 昨年から僕は全日本スキー連盟(SAJ)公認指導員となったことで、テイネのスノードルフィンスキー学校SAJ校の校長に任命された。そのため北海道地区で毎年行われているスキー指導員研修会への参加が義務付けられた。
 今までの僕はこのような指導員、級付けなどとは全く無縁のスキー人生だった。というわけで恥ずかしながら初めての講習会出席となった。

 最初の机上講習で講義を聞いたとき、頭の中には無数の疑問詞が浮かんだ。講師の言っていることがさっぱりわからない。ハイブリッドスキー、フェースコントロール、二軸理論など難解な理論と単語が飛び交い、まるで未知の惑星に降り立った気分だ。
 机上の理論よりもこうしたものは実技で体感した方が早い。翌日から雪上講習に普段履き慣れないカービングスキーでその場に挑んだ。
 講習を受講しながら分かったのは現在の「基礎」といわれている指導法は、回転性能に優れたカービングスキーで完全に整備されたバーンという条件の下でのもので、応用性に乏しいということだ。

 何度も僕が質問して実技を遮るため、最後に講師から指摘するポイントを示してみてくださいと要求された。そこで僕は彼らが行っている二軸理論の「内足主導」を小さなたった一つのコブを超えて行うようすべての参加者と講師に試した。結果、僕を含め、講師と参加者全員がバランスを崩しその後ターンをつなげることはできなかった。
 モーグルスキーヤーもアルペンレーサーも整地の基礎を重視する。派手にコブを滑るモーグルとスピードを求めるアルペン、一見全く違うと思える2つの競技には驚くほど共通点が多く、これらの応用はパウダーやハードバーンにも通じる。しかしこうした根本的な共通項が「基礎スキー」といわれる分野には見当たらないというのが現状なのだ。

 生前、祖父・三浦敬三も整地でのスキーを重視していたが、それはあくまで「山スキー」をするための練習場だった。
 「スキーに悪い日はない」とエクストリームスキーヤーのグレン・プレイクは言う。彼はあらゆる条件でスキーを楽しめる技術を持っていた。どんな時、どんな斜面でも通用する基礎を磨くこと、それこそが「本当の基礎」ではないだろうか。

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