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逗子の自然 楽しみ学ぶ

2016年4月23日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 神奈川県逗子市に引っ越してきて13年になる。息子も地元の小学校に昨年入り、せっかくなので逗子の自然を生かした活動に参加させようと見つけたのが「黒門とびうおクラブ」だった。
 同クラブの代表、永井巧さんはほかのアウトドアプログラムを通じて面識はあった。とびうおクラブは7年前から行っている子供達を対象としたアウトドアプログラムである。

 息子の様子を見に時々顔を出すと毎回面白いプログラムを行っている。ライフセービングに使うパドルボードで海を散歩したり、10人用の巨大なスタンドアップパドル(SUP)に子供たちを乗せてこいだり、カヌーで沖に出たりと海の遊びを満喫している。
 夏だけではなく、冬の日没の早い時期、逗子の里山へヘッドランプをつけてのオリエンテーリングや洞窟の散策、ツリーハウス作り、時には富士山の麓や近くのキャンプ場でキャンプを行う。おかげで息子は僕の知らない多くの逗子を知っている。

 先日、挨拶がてら永井さんと話す機会を得た。永井さんは大学の頃に海に憧れ、鵠沼でライフセーバーになった。その後、海外に渡りタヒチの黒真珠つくりやサーファー向け波情報会社など海を中心とした仕事に就く。
 その中で現在の原点となる出来事が起きた。1990年代にソマリアの難民キャンプでボランティアをしていた時のこと。当時ソマリアは内戦状態にあり、とても治安が悪かった。永井さんの仕事は雑用と荷物の整理をすることだったが、それでもキャンプから出るときは必ず警備をつけなければいけない。2~3週間ほどたち仕事にも慣れてきた時、近くの倉庫に警護をつけずに行ってしまったという。その帰り、銃を突きつけられ強盗に遭う。
 この強盗はキャンプの武装警護に捕まり射殺されたのだが、永井さんは自分の不注意で事件を引き起こし、人が亡くなったことがショックであった。そしてコミュニティー間の信頼が失われた状態がいかに危険かを目のあたりにした。「ライフセーバー」について根本的に考えるきっかけになったという。

 現在のとびうおクラブの活動はまさにコミュニティーベースのブログラムだ。子供だけではなく親も積極的に参加し、子供たちと同じ目線で逗子の自然を楽しんでいる。

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