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身体の声に耳を傾ける

2011年2月5日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先週、長野県高山村での冬のアンチエイジングキャンプを行った。
 このキャンプには中尾和子先生のボールエクササイズがある。彼女は1983年に「第1回ミス日本エアロビクスコンテスト」に優勝するほどの一流アスリート。しかし、当時、長男の授業参観で1時間立っていただけで疲れてしまったことなどから、見かけだけでなく体の中からの健康を目指すコンディショニングトレーニングの重要性に気がつく。

 現在、太鼓とエクササイズを融合させた「太鼓ビクス」や「コア・ストレッチ&ダンス」を開発し「JSAボールエクササイズ」を自ら立ち上げ健康への啓蒙活動を行っている。
 味のある京都弁でテンポよく人の心をつかみ、冗談交じりにエクササイズを行っているうちに参加者はいつの間にか中尾ワールドに引き込まれ、トレーニングプログラムが進んでいく。非常に科学的で解剖学と実践に基づいた理論にはいつも納得させられる。カリスマ性のある彼女の指導にファンは多い。
 エクササイズのコンセプトの中心にあるのは動きの質を高めることだ。無駄なく滞りのない、緊張の無い動きを習得して、身体感覚を磨くことだ。
 通常どんなに単純な動作でも必ず複数の筋肉が動員される。この時、過度な緊張は筋肉間のスムーズな動きを阻害してしまう。彼女の説くエクササイズはリラックスするところから始まり、体の中にある200個以上の骨とそれを稼働させる筋肉部位一つ一つに意識を向けるように誘導する。彼女に指摘され初めて動く感触を得る筋肉もあるし、意識しても動かない筋肉もある。

 立つ、座る、歩く、寝るなど、まさに日常生活に含まれる動きそのものがトレーニングとなる。筋肉は神経の命令により動く。それだけに普段気がつかない癖や緊張、そしてストレスが体に反映される。エクササイズは体の声に耳を傾けるきっかけを与えてくれる。
 筋肉動作は僕たちの心の副産物ともいえる。体の緊張をほぐして姿勢を正し、抵抗を少なく筋肉を動かすことによって心は変わり、より意欲的に体を動かそうと意識が働き始める。すべての立ち居振る舞いがエクササイズであり、心と体が一体であるということを、中尾先生のブログラムを通じて再確認した。

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