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夢にトキメキ 若さ保つ

2013年6月22日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 日本に帰り、今回のエベレスト登山についての記者会見が行われた。その中の質疑応答の時、記者に交じって地元の老人会の方が手を挙げた。
 彼は父、三浦雄一郎に対して「三浦さんのエベレストの快挙には驚いています。しかし、普通の人がエベレストに向かうということはなかなかできません。どうしたらいいのでしょう」と言う。
 それに対して父は「重要なことは目標や生きがい、やりがい、そしてトキメキを持つことです。エベレストを目指さなくても、旅行をする、温泉に入るなど旅を計画するのも立派な目標です」と答えた。

 アンチエイジングは医学的見地から、食事や運動など健康的に年齢を重ねる方法についての研究はかなり進んでいる。しかし「生きがい」「夢」「目標」など哲学的分野と重なる部分に関しての研究は最近になってから注目され始めたところだ。
 その中に「ロールモデル」という概念がある。それは「お手本」という意味だ。長寿の方が夢中になっているもの、それはおそらくその年齢に達するまで求め続けられる奥深さがあり、その活動を中心に健康や生きるための意義が高まるという考えだ。
 例えば、僕の祖父、三浦敬三は年間、110日間スキーを行い、101歳まで続けた。祖父は生前「私は一度も同じ雪を滑ったことは無い」と語っていた。あらゆる状況に対応するため、スキーのチューニングや技術に工夫を重ね、健康法や食事法を編み出した。これはすべてスキーを中心としている。
 定年でコレからスキーを目指す人、60歳であるならその先からさらに40年間スキーに関してはできるという希望がロールモデルによってもたらされる。

 今回、父は80歳でエベレストの頂上に立った。それは高齢者にとってかなりのリスクの高い目標であるが、80歳の年齢で世界の最高峰に立てるのであれば、少なくともそれ以下の高所もその年齢まで登山が行えるという可能性を示した。
 山はそれこそ山の数ほどある。自分の健康維持、目標設定、適切な登山計画があれば、十分に山を選ぶことができるし、一つ山を越えることで次の山が見えてくる。
 「夢」や「目標」はトキメキによって支えられている。そしてロールモデルは、そのトキメキがどれくらい続くか、その道を照らしてくれる。

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