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山岳医が同行、心強く

2012年11月10日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 今回のエベレストプロジェクトにはこれまでにない心強いチームメンバーがサポートとして加わってくれた。日本で始めて国際山岳医として認定された大城和恵さんである。
 国際山岳医制度とは1997年、国際山岳連盟(UIAA)、国際山岳救助協議会(ICAR)、国際登山医学会(ISMM)が共同で会議を開いて発足させたものだ。医師自身が実践的に山岳活動を行いながら、同じ質の医療を世界各地の山岳環境において提供できること、すなわち「アクティブインマウンテン」が目的となっている。日本では2010年からこの制度がある。

 これまで父の医療体制は僕が登山中の父の後ろにつき現地のデータ(心拍、心電図、血中酸素飽和度)を採り日本にいるドクターチームにアドバイスをもらいながら、その指示で体調を管理していた。
 これは遠隔治療としては画期的ではあったが、現場と日本のドクターチームからの指示にタイムラグが出来るほか、それに関する機材の運搬負担、そして何よりも僕自身が時には医療的な知識に不安を持ちながら決定を下さなければいけないストレスがあった。今回のプロジェクトでは現場に実践的な山岳医がいることは父の医療サポートの向上、チーム全体の健康管理、そして僕の負担の軽減に大きく寄与することになる。
 特に大城先生は札幌の心臓血管センター北海道大野病院に勤めていて、専門は循環器内科だ。不整脈などの疾患を持つ父には最も適した人材である。なによりも彼女自身も登山家で、これまでマッキンリー、キリマンジャロ、マッターホルンなど国内外で積極的に登山してきた。性格もとても明るく気さくで、三浦隊の雰囲気にすぐなじんだ。

 国際山岳医は世界の山々で活躍する。医療、レスキュー、そして登山の知識と技術が高レベルで求められるスーパードクターだ。そのために相当な努力と時間をそれぞれの分野につぎ込まなければいけない。こうした仕事に大城先生がついた理由を聞いてみると「医療が人を生かすように、私は山に生かされていると感じている。山岳医になることによって山に少しでも恩返しが出来たらと思っている」。山岳医のモットーとしている「アクティブインマウンテン」を体現している人である。

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