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名選手育てた天然コブ

2017年4月15日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 父の雄一郎と僕がベースとしている札幌・手稲山のスキー場、サッポロテイネ。父が代表を務めるスキースクールの本拠地がここにあり、僕も小学生の頃から通っている。
 斜面変化に富み、初級者から上級者まで楽しめるため、札幌市民からも愛されている。昨年、スキー雑誌「ブラボースキー」が現役スキーヤーなどを対象に行ったアンケートで、総合1位にもなった。アンケートには斜面、コブ、パークの充実度、深雪、景色などの評価項目があって、サッポロテイネは特に北壁コースが急斜面とコブの項目で高い評価を得た。

 北壁コースはサッポロテイネハイランドゾーンの山頂につながるサミットリフトの横にある。最大斜度は36度。立ち木がいたるところにあるため圧雪車が通行できず、コース管理といえば、切り株にマークをするのがせいぜい。ワイルドなコースなのである。
 ここでは天然コブがいたるところにできている。天然コブとはその名のとおり、スキーヤーがカーブを描くときのエッジの圧力によって雪が掘れたり、たまったりしてできる凹凸である。
 近ごろはその天然コブも、モーグルや基礎スキーといった競技向けの不整地を指すようになった。スキーヤーたちが同じところを滑ってできる溝のようなコブ、すなわちラインコブが主流となっている。テイネのように急斜面と立ち木によって自然にできる天然コブは、全国的に見ると希少価値が高いのである。

 北壁コースの天然コブはリズムも大きさも不規則で、チャレンジしがいがある。ラインを見て先を読む力、臨機応変に動ける強いポジションと技術、何より急斜面に立ち向かう強い気持ちが鍛えられる。こうした環境が日本を代表する数多くのモーグル選手やフリースキーヤーを育てたのかもしれない。フリースキーヤーでは児玉毅、佐々木大輔。モーグルでは長野金メダリストの里谷多英はじめ附田雄剛、原大虎もこのスキー場出身である。

 先日、サッポロテイネでキッズキャンプを行った。チャレンジ精神旺盛でスリルが好きな子供達にとって北壁コースは遊園地のジェットコースターやお化け屋敷みたいなものなのだろう。何度もいきたいとせがまれる。僕自身も「北壁」という言葉を耳にするだけでなんだか心が熱くなる。僕はまぎれもなくこの山に育てられたのだ。

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