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懐かしくて 新しい ヤギのいる暮らし

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 里山の緑に映える姿、放牧されているヤギの姿を観ていると懐かしい感覚を覚えてきます。 そもそもヤギと人間との付き合いはとっても古く、犬の次に家畜化された動物といわれており、その歴史は紀元前6600~7600年ごろまでさかのぼるとされています。 

奈良というと鹿というイメージが定着していますが、昭和30年代まで県内の農村では多くのヤギが、牛とともに家族のように飼育されていました。 牛に比べると小型で、多様な草を食用とするヤギは子供でも容易に世話ができます。 年配の方々には、子供の頃にお世話をしていた、お乳を飲んでいたという経験がある方もたくさんおられるのではないでしょうか。 しかし昭和36年に農業基本法が制定され、牛、豚、鶏の効率重視の多頭飼育が奨励されていく過程の中、昭和32年に全国で76万頭が飼育されていたヤギは現在2万頭まで激減、その姿は次第に農村から消えていきました。

 ところが興味深いことに近年になって、豊かな田舎暮らしのパートナーとしてヤギやヒツジなどの在来の中小家畜が注目され、農家レストランや観光農園等々で飼育される方が増えています。 私達も在来作物、ヤギと共生する暮らしなどの農村文化を調査・保存するためにNPO法人「清澄の村」を設立し、日本の在来種であるシバヤギを17年間飼育してきました。 これまでに約70頭の子ヤギが里子として旅立ちましたが、一過性のブームと異なり、今でも子ヤギを希望される方が後を絶たない状態が続いています。 

経営する農家レストランでもすっかり人気者となっているシバヤギのペーターファミリー。 ヤギを飼っていると多くの方から「ペットですか」「何のために飼っているのですか」とご質問がありますが、その時にはヤギは5つの仕事をしているとお答えしています。(1)生きた草刈り機として畑の除草を助けてくれる、(2)人間の母乳に最も近い成分をもつミルクを与えてくれる、(3)コンポスト役として野菜クズを堆肥に変えてくれる、(4)子供との相性が良く情操教育を担ってくれる、(5)犬や猫とはまた違う魅力の癒やし効果で接客してくれる、と。  

地域が忘れかけていた 愛らしく、飼いやすく、私達人間の古くからの伴侶であるヤギ。 
懐かしくて新しいヤギのいる暮らしと風景が、やわらかくよみがえることを願っています。
                   

◆お薦め本☞ 
「ヤギ飼いになる」中西良孝 監修 誠文堂新光社 2017年
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/pets/20553/

「ヤギと暮らす」今井明夫 監修 2011年
https://bookmeter.com/books/4258144

※生き物を飼育するには責任としっかりとした知識が不可欠となりますので、ヤギ飼育に関心を持たれた方への一読をお薦めさせていただく内容です。

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