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『こころ』の準備ができました

ようやく「こころ」の準備ができました。

え?なんのことかって?

ようやく、夏目漱石『こころ』を読む準備が整ったと、そういうことであります!

われながら、長い準備期間を経ましたが、そろそろ読んでみようと図書館へ走りました。

読むにあたり、やはり大切なのは本の選定です。

『こころ』ほどの名作なら、いろんな出版社から出ているはずです。その中から、自分にとって読みやすいものを選びたい。

ここで活躍するのが図書館です!各社同タイトルを見比べることができる!なんて素晴らしき図書館の世界📖。

探してみたところ、7冊見つけることができました!いそいそと借りてきました。いやあ、大漁大漁😄

大興奮で帰ってきましたが、ここからは気持ちを落ち着けて、真剣な選定作業に入ります。

まず見るのは字の大きさ。字が小さくて画面いっぱいに文字がきつきつですと、目が圧倒されてしまいます。なので、ほどよい字の大きさと余白のあるものが好きです。

また、語注や注釈、解説の内容も重要です。

語注や注釈は語句や内容を短く説明したものですが、その少ない文字数の中に、どれだけ「自分の求める情報」が入っているかをチェック。ここから得る学びや情報がかなりおもしろいので、ここは真剣に。

そして「解説」の内容が自分にとって、ハッとしてグッとくるのかどうか。これが一番大事です。作品と出会う重要な局面ですからね。ここは非常に大切にしたいところです。

個人的好みによってかなり差が出ますので、真摯に読み比べをしなければなりません。

それで、ハッとしてグーならば、よし!買いだ!となります。ここでようやく、フーッと一息つくことができます😊

おっといけない、忘れてはいけないのが表紙の絵、つまりカバー絵です。これがすてきだと、なおのこと嬉しくなります(^^)。

というわけで、これら3つの観点をもとに、本を選びます。

それでは各文庫、見ていきたいと思います。「解説」は解説者の名前(敬称略で失礼いたします)、注釈は何ページ分あったか、いくつ語句をのせていたか、数も数えました。(数え間違いがあったらすみません💦)

本の注釈から言葉を学んだという実感がありますので、注釈の数が多いとうれしい。

やはり語句は、そのものの意味理解も大事ですが、文脈の中でどう使われるかを覚えるのも大事です。小説作品のなかで注釈を参照しながら語句の意味、使い方を知るのは実践的ですし、非常に楽しく、エキサイティングです😊。

各社細かく書いていきたいところですが、文字数の関係もありますので、印象に残った点だけ、ピックアップして書いていきたいと思います。


それではます、『こころ』とは、
「1914(大正4)年4月20日から8月11日まで朝日新聞にて連載され、同年9月に漱石自身の装丁で、岩波書店より刊行された。自費出版という形式ではあったが、この作品が岩波書店にとって、出版社として発刊した最初の小説となった。」(Wikipediaより引用、要約しました)

そういえば漱石山房記念館にいったときに、漱石に関係する人々の中に岩波茂雄(岩波書店創業者)の名があり、おお!と思いましたが、こういうふうにつながってくるのね…。非常に感慨深い。

まずは❬岩波書店❭

●通常版(2021年)
●ワイド版(2008年)

中身は同じ。わたしは字の大きさ的にワイド版が好きです。手触りや柔らかさ、手の中にしっくりとなじむ感触も好きですね。

「注」は巻末に13ページ分。140語。
大野淳一さんによる注釈です。

そして❬新潮社❭(平成25年)。

かき氷のようなカバーが印象的。

「注釈」は巻末に21ページ分。140語。
こちらも大野淳一さんによる注釈です。

巻末には解説として、江藤淳『漱石の文学』を掲載。(昭和54年9月に書かれたもの)。
非常にハッとしてグーでありまして、うん、新潮社で買います。決まりです。

ネット書店で調べたら、カバーが変わっています。最近はカバーが変わる周期が早いですね。ジャケ買い狙いでしょうか。手を変え品を変えカバーを変え、じゃんじゃん売り出していこうという戦略なのでしょうか。

しかし、ひとつ気になる。
書誌情報に「改版」とあります。

どういう部分が「改」なのか…。
そのうち「序」とか「破」とか進化するのかッ⁉️
江藤淳の解説は入ってるんだよねッ⁉️

何が「改」になったのか、非常に気になります。中身が変わっていたらわたしは困ります。商品ページの書誌情報には、解説:○○とか、名前の記載がない。新潮社HPにもその記載はない。

困るなあ。だってわたしは江藤淳の解説が読みたいがために新潮社版を買うのです。江藤淳解説が無かったら泣いちゃうんだからねッ!と怒りつつ、多大な不安を抱えつつ、えいやっとネットで注文。届くまで心配だなあ…。さらに進化して「Q」版とか「シン」版が出ていたらどうしよう。ドキドキします。

続きまして、❬角川文庫❭(令和4年)。
装画はおしゃれなてぬぐい屋さん「かまわぬ」の切り継ぎ小紋。シックでおしゃれですね。「解説」に、明治25年ころの若き日の漱石先生の写真が載っている。ここはときめきポイント。「注釈」は巻末に5ページ分、50語。

そして、ちょっと異色の、❬海王社文庫❭。
解説はありませんが、
谷山紀章さんによる朗読CD(8cm )付きというプレミアム感の高い一冊。
声優さんの朗読により、現代の雰囲気をまとった『こころ』となっておりました。新鮮です。
「語注」は10ページ分、238語。

そして❬ちくま文庫❭。
こちらは夏目漱石全集の8巻です。
「解説」は吉田精一。

岩波文庫の装幀について、
「漱石は装幀その他一切を自分で考え、支那古代の石鼓文の石摺から表紙の意匠をとった。これがのちに漱石全集独特の装幀として読者に印象づけたものになった」
と書いています。これを知ると、岩波の漱石全集の装幀をみるのが楽しくなります!こういう豆知識、大事です😊!

ちくま文庫は、「注釈」は巻末ではなく、難解な語句に小口注を付す形式。見開きごとに、左側ページに掲載されています。じつはやっぱり、これが一番見やすい。わからない語句があるたびにその都度巻末にいくのは億劫というのが正直なところですから、ちくま文庫の読みやすさはピカイチです。ちくま文庫、買います!

そして最後に、思わぬところからキラリと光る本気をみせる集英社版(2008年)。

表紙が小畑健さん。ヒカルの碁っていうか、DEATH NOTEっていうかバクマン。っていうか…。うむ!ジャケ買い決定!

そして巻頭から漱石先生関連の写真が4ページ。やっぱり写真があるとハッとしてグーよね!集英社、よくわかってるよねッ!確信的な鮮やかさよねッ!

よし、集英社版、買いだ!と思ってネット書店を見ましたら、むむむ!現在はカバーが変わっているではないかッ!

盛り上がった購入意欲が一気に沈む。この購入意欲の行き先はどうしたらいいのか。

風よ教えて、届かぬ思いの行き先を……なんて、柄にもなく詩を書きたくなってしまったじゃあないかッ!

あのですね、カバーをあんまりコロコロ変えないでくださいね、すごーくがっかりしちゃうので、そのへんのところ、よろしくお願いしますね、ほんとに、モゴモゴ……。

「語注」は10ページ分、141語。そして特筆すべきは『「鑑賞」吉永みち子』!とても興味深くおもしろかったです。女性の視点から見ると、この作品の見えかたがまったく違ってくる。新しい視座を得ました。おもしろかったです!自分が昔より大人になったから、この新しい視座がわかるようになったのかなと感じます。

というわけで、ひとまず7冊チェックできました。今回は新潮社とちくま文庫を買おう!と方向性が決まりました。図書館よ、ありがとう!!😄📖

読む本が選べたことはとても嬉しい。しかしほんとうは、とても切ない…。

図書館のパワーをもってしても、この切なさは消せやしない。

なぜかと申しますと、

本を見比べて買うというこの至福を、本屋さんでできたらいいのに…という、叶わぬ夢があるからなのです。

現在、わたしの近所には、行ける範囲で4軒の本屋さんがあります。出版各社同タイトルの漱石作品が置いてあるのは、いまのところ1軒です。(あったのは角川版と新潮社版)

しかもその1軒とは、ある書店が閉店したあとに居抜きで新しくオープンした書店。オープンしたばかりなので経営体力があるためか、名作が置かれています。嬉しいことです。

(閉店した本屋さんも、華々しくオープンした当初、名作が充実していた記憶が切なくよみがえります。)

この何年かで見てきたことを少しお話しますと、

時間がたつと、経営効率をあげるためか、売れ筋の本ばかり扱うようになってきたりして。その流れで文豪の作品ゼロ、みたいなことも出てきます。扱う商品も、本が縮小して雑貨優勢になったり、お店の信念の核がなくなってしまったみたいに中身がガラーンとしちゃったり。そして閉店…など、いろんな悲しいものを見ました。

お店にはいますぐ売れるものだけを置く、売れないものは置かない。これが現実なのかな…。切ないことです。

それでもここはなんとか、めげずにいきたい。しかし抗いすぎず、さりげなくいきたいものです。どんなに時代が変わっても、できることをして、いつだって自分のやり方、楽しみ方を見つけていければいい。それがささやかな抵抗です。

時代の変化を悲しまなくてもいい。できることを楽しくやろう。現代にマッチした方法で、気分はギンギラギンにさりげなくいこう。

そんなふうに自分に言い聞かせながら、わたしとしては、図書館で本を選び、欲しいと思った本は書店で買う、書店になければネットで買うという、自分なりの方法でやってみようと思います。

ひとまず、『こころ』の注文ができましたのでひと安心。あとは、届くのを今か今かと待つだけです!😄

本日も長文におつきあいいただきまして、ありがとうございました🙇

⭐️この日記は2023年2月17日に書いたものです。

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