見出し画像

『文豪たちの友情』感想文

先日、田端文士村記念館に行ったことを投稿したところなので、私にとって非常にタイムリーな本です。

本日ご紹介するのは
石井千湖 著『文豪たちの友情』です。

「タバタニサクタロウキタリ」という芥川の言葉から、
私は、芥川と朔太郎の友情に焦点を当てて展示を見ましたが、

実は、もともとは室生犀星と萩原朔太郎の友情が先だったことを、本書で知りました。

(以下、本書から抜粋し要約しました。)

2人を結びつけたのは、北原白秋が主宰した雑誌『朱欒(ザンボア)』でした。

朔太郎が白秋に傾倒していたこと、
犀星が白秋に才能を見いだされ、『朱欒』に毎号詩を載せてもらっていたことが縁で、2人は文通で友情を深めていきます。

2人が初めて会ったのは、1914年2月14日、犀星が朔太郎の住む前橋にやって来た日でした。

町を歩くとき、いつも小声で室生犀星の詩を暗誦していたという朔太郎。(←こういうところ、かわいいですね。ときめきます✨)
犀星に会うことを楽しみにしていましたが、その期待は見事に打ち砕かれます。

朔太郎は室生犀星を「非常に繊細な神経をもった青白い魚のやうな美少年」と想像していたそうです。(←この想像もどうかと思いますが…💦)

しかし現実の室生犀星は「ガッチリした肩を四角に怒らし、太い桜のステッキを振り回した頑強な小男」で、「非常に粗野で荒々しい感じ」だったと朔太郎は書いています。詩や文章を書く人であるせいか、こういう描写が容赦ないというか、キビシイですね💦

さらには室生犀星の髪型にまで…。犀星の、長髪で「女の断髪みたいに頸で一直線」に切ってある髪型を、「それが四角の水平の肩と対照して、丁度古代エヂプト人のやうな姿に見えた。」と書いています。
ピラミッドの絵のイメージが浮かんできてしまいました。例えの壮大さに思わず吹き出してしまいました。

それに対し犀星も、朔太郎の印象を、
「第一印象は何て気障な虫酸の走る男だろうと私は身ブルイを感じた」などと書いています。

お互いの第一印象はサイアクだったわけですね😖💦💨

でも一緒にいるうちに、「室生君は始め僕に悪寒を抱かせた人間ですが三ヶ月ののちにすつかり惚れてしまひました」と朔太郎がいうほどに仲良しに。(悪寒とか…💦この言い方が問題なんだよね💦と思いますが😅)

第一印象がサイアクなのに、大好きになっていただなんて、なんだか恋愛ドラマのような…。
詩で通じ合うことによって、2人の間に
「相思」の強い友情が生まれたのでしょうね。

こんなエピソードもありました。庭のあやめが咲いたから、故郷から鱈や蟹が届いたから、といっては友人を自宅に招く犀星。

当時のことを室生犀星の娘である室生朝子が回想しています。

お酒が始まって少しすると、犀星から新聞紙を持ってくるよう言われ、持っていく。するとハギサクさん(朔太郎のこと)が座布団を持って立ち上がっている。朝子が新聞紙を広げてその上にお膳を置くと、ハギサクさんは「あさちゃん、ありがと」といって座布団をおいて座り、すぐに盃をもつ。
朔太郎がよく食べ物をこぼすので、畳を大事にする犀星が考えたことである…。

朔太郎、食べ物こぼすのね…💦。こういう、おもしろいエピソードが満載なのです。

今回は朔太郎と室生犀星を中心にご紹介しましたが、

本書第一章から第三章は、

佐藤春夫と堀口大学
室生犀星と萩原朔太郎
志賀直哉と武者小路実篤
川端康成と横光利一

正岡子規と夏目漱石
石川啄木と金田一京助
国木田独歩と田山花袋

芥川龍之介と菊池寛
太宰治と坂口安吾
梶井基次郎と三好達治

泉鏡花と徳田秋声
中原中也と小林秀雄
谷崎潤一郎と佐藤春夫

といった文豪たちの友情エピソードを知ることができます。

そして、第四章では
夏目漱石と門下生たち
志賀直哉と弟子たち
江戸川乱歩と仲間たち。

この章では、漱石と門下生のエピソードが、私にはとても印象的でした。

たくさんのエピソードから、漱石が門下生たちからとても愛されていた、ということがよく分かりました。

漱石というと、やや神経質で癇癪持ち、というエピソードは読んだことがありますが、本書ではまた違う面を知ることができました。

門下生である中勘助は、一緒に酒を飲んだときの、漱石のチャーミングな姿を書いているそうです。そういう可愛い部分を持っているところが、漱石の魅力だったんだなあと思いました。

乱歩と夢野久作の親交も興味深かったですね…。

あれもこれも書きたいですが、書ききれないくらい、読みごたえたっぷりです。

読みやすく分かりやすくて、とても楽しく読める本だと思います。
わたしも非常に楽しく読みました!

本書を読んでいただけたらきっと楽しいと思いますので、ぜひ、おすすめします😊。

最後までお読みいただき、ありがとうございました😊

『文豪たちの友情』
石井千湖
新潮文庫
令和3年9月1日

#文豪たちの友情
#石井千湖

⭐️この感想文は2022年12月3日に書いたものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?