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本日の猫たち #339(翻訳の話を少し)

飼い主は修行僧のように翻訳(趣味、トレーニング)とものかきに励み、猫たちは猫たちで自分の生活を楽しむ。そんな生活が続いています。

ちょっとロシア語翻訳の話をします。
「そんなのはいらない。猫が見たいんだ」という方は、猫の写真までスクロールしてください。

旧社会主義国に住んでいたとき、オファーがあれば露日、日露翻訳仕事をすることもあったのですが(主に産業翻訳です)、この4週間、久しぶりにがっつり翻訳してみて(児童書2冊、SF短編1つ、トルストイの短編2つ、どれも下訳レベルです)、個人的にはめちゃくちゃ楽しかったです。
0から物語をアウトプットする小説と違い、翻訳の場合すでに原稿がそろっているわけです。ということはきっちりペース配分ができ、スケジュールを立てやすい。訳語の選択に「あー、どれも違う」「日本語としてしっくりこない…」「日本語でこういう言い方はないなあ…」と、迷うことはあっても、「原稿自体がある」安心感はすごいです。無心でPC入力できます。
(小説を書くときはいつも綱渡りでした……)

中でも夢中で読み返したのが、SF作家キル・ブルィチョフの"Сто лет тому вперед(100年の彼方)"。

キル・ブルィチョフの「100年の彼方」(1978年)


キル・ブルィチョフを知っている日本の方は、1%もいないような気がしますが、ソ連の子供たちが夢中になっただけあって、子供目線で読んでも、大人目線で読んでもおもしろい。
(映画と原作で違うところがあるのもおもしろいです)

あらすじは、ざっくり説明すると、

急病で入院することになったご近所さんの鍵を預かったコーリャ(主人公)。そのご近所さんの家に行ったら、いつもは閉まっている部屋の扉に鍵がささってままになっていて、入ってしまったら、そこになんとタイムマシンが。うっかり乗ってしまい、100年先の世界へ。
そこで未来の人と知り合ったり、未来の乗り物に乗ったり、未来の建築を見たり、やたらアイスクリームを食べたり……。多くのハプニングを経験し、コスモズー(宇宙動物園)でアリサと出会います。
アリサが持っている稀少なミエロフォン(生物の思考を読む装置)が宇宙海賊に盗まれてしまったところを目撃したコーリャ。宇宙海賊を追って奪い返したのですが、逆に宇宙海賊に追われることになり、ミエロフォンごとタイムマシンで現代(ソ連時代)に戻ります(1巻)

そのコーリャをアリサが追いかけて、現代(ソ連時代)に行ったところ、トロリーバスにぶつかって記憶喪失に。宇宙海賊もミエロフォンを追って現代に来ていたので、アリサは運び込まれた病院を抜け出し、同じ部屋に入院していたユーリカ(コーリャのクラスメート)の家に住み、一緒にソ連時代の学校(アリサからすると100年前)に通ってコーリャを探すことになるのですが、なんと同じクラスには3人の「コーリャ」が……。(2巻)

ネタバレになるので、中盤、結末は省略します。

児童書なのですが、出てくる人たちがみんな魅力的で、生き生きとしたリアルな会話、緻密で自然な展開と伏線、物語の構成力が本当に素晴らしく(1巻の伏線が、2巻ですべて回収される…)、ソ連時代の小学校の様子がすごくわかるので、ロシア語を学習する人に心からおすすめしたい一冊です。

(ロシア語を学習する人は、なぜか1、2年勉強したレベルでトルストイとか、ドストエフスキーといった、現代ロシア語より難解な古文を目指す傾向があるようなのですが、最初は児童文学こそおすすめ。どの単語、会話文もすぐに実践で使えますし、物語の展開が王道で読みやすい。どんどん読んでいくうちに、自然と語彙が増え、読解力も身に付きます)


……という感じで、集中して翻訳していたら、目の前にいた妹猫と目があいました。

「………」


うちの猫たちがすごいのは、ちゃんと空気が読めるところです。
飼い主がゆるーく読書しているときは、「遊ぼうよ」と寄ってくるのですが、真剣に読書(翻訳)しているときは、絶対に邪魔をしません。

妹猫がひとりでいるのは珍しいので、飼い主と遊ぶためにここに来たのかな? と思いきや、パトロールに行った先住猫待ちでした。

「……別に飼い主に興味はないもん。先住猫を待っているだけだもん」



妹猫(右)を舐める先住猫(左)


一緒に寝ます


妹猫「先住猫と一緒でうれしい」


キル・ブルィチョフの作品、まだ日本で出版されていないのなら、わたしがやりたいなあ……と密かに思っています。(著者は存命なので、許可とる必要がありますね。ただ日本で翻訳の出版社ってどう探せばいいのでしょう……? ご存知の方、よかったら教えてやってください)

最後までご覧いただき、ありがとうございます。
気が向いたら、またのぞいてやってください。

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