青の緞帳が下りるまで #10
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展示品二 オゼルキ村の写真
奇跡的に生き残った市民から提供。ヴィーカ、ヴィーチャの但し書き。
マエストロの家族写真とされるが不明。
展示された写真を見たマエストロは、懐かしそうにイーラに言った。
「ええ、忘れもしません。ミーチャです。私の命の恩人です」
「祖父は自分がマエストロを救ったことを、生前一度も口にしませんでした」
「できないでしょう。亡命者の援助をしたなどと知れると、極刑に処されたでしょうから」
イーラはマエストロに訊いた。
「写真に写っている女性は裏面の但し書きの名前から私の祖母だと思うんですが、どこで知り合ったのですか?」
「いえ、違いますよ。このヴィーカは私の姉です」
「マエストロのお姉さん?」
マエストロはうなずいた。
「オゼルキ村のスタジオで撮影したのですが、そのとき撮った一枚は、焼失してしまったのです。ミーチャはこの写真を捨てずに持っていてくれたのですね」
マエストロは淡く微笑むと、イーラに言った。
「ミーチャは姉を自分が殺したと、ずっと気にかけていたようです。彼のせいではないと、伝えたかったのですけれど」
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