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メガネ (草食系男子が教えてくれたこと・毎週ショートショートnote)

 絶対にかわいいって言われたいから。今日もしっかりメイクをしている。左目だけ少し小さいのが気になるから、左のアイラインはより太く。
 汗をかいてもいい匂いって言われたいから。こまめに香水をつけ直す。多くの愛され女子とやらがつけている人気の香水。高いから、ほんの少しずつ。
 セクシーだねって言われたいから。制服のワイシャツのボタンは、胸の谷間が見え隠れするくらいに開けておく。チラリズムってのがいいんでしょ。

「ねえ」
 教室で隣の席に座る男子が声をかけてきた。いつも本を読んでる。モテることとか、女の子とかに興味なさそうなメガネ。
「なあに?」
 私だってメガネにことさら興味はないけど、一応甘ったるい声で返事をする。だって誰が見てるかわからないし。
「下品」
「は?」
「そのいでたち、下品」
 メガネはぴしゃりとそう言った。私の苦労と努力を、よりによって私にだってわかる最低の言葉で、くしゃくしゃに丸めて捨ててみせた。
 鼻がつんとして、涙の気配がする。どうしても二の句を継げなかった。
「もったいないよ。せっかくかわいいのに」
 メガネは早口でそう言い捨てて、耳の先を赤くして立ち去った。


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