見出し画像

カマルグ

日曜日、カマルグに出発する前に「サングラスを付けた方がいいよ」とフィリップ君に言われ、朝市で適当なUVカットのサングラスを買った。
午前中用事があったフィリップ君に合わせて、確か電車の隣の駅で待合せしたが、何も無い駅ロータリーでかなり待たされてしまい、ジリジリした記憶がある。
私がフランスでレンタル携帯を持っていれば良かったのかも知れないが…時代です…。

カマルグまで車で1時間前後かかった気もする。
ビーチにも行く予定だったので、タンクトップの下に水着も着て行った。

基本日本ではインドア派だったので、成人してから夏の海はほぼご無沙汰だった…

パスカルとのメールのやりとりの中に水着を持ってきた方がいいよ、とあったので意を決して日本を立つ直前に黒のビキニを買ったのだった。

カマルグはほぼ湿地帯だけれど、すぐ側に部分的なヌーディストビーチがあるんだよ、とフィリップ君が言う。

「えっ!イヤだ、私脱ぎたくない!」
「大丈夫だよ、脱いでも脱がなくてもどっちでもいいんだよ」
(ホッ…)

湿地帯へは車の侵入禁止なので、パーキングで車を停めるとレンタサイクルで自転車を借りることに。
浮き輪などを売ってる売店でジュースとオヤツ用のビスケットを買うと、サラサラ砂まみれの一本道をひたすらマウンテンバイクで走った。

途中で湿地帯が見えてくると、遠くの水辺でフラミンゴ🦩が寛いでいるのが見えた。野生馬には会えなかったけれど...

画像1

ヌーディストビーチは遠くに1組の男性カップルがいるだけで、ひと気が無く閑散としていた。
しばらくすると見事にスッポンポンの老夫婦が仲良く手を繋ぎビーチを横切っていった。
それは自然に帰った二頭の年老いた象をイメージさせた…

南仏では、日焼けしてないと男女共にイケてないと見なされがちなので、泳がずにビスケットを齧りつつ、せっせとブロンゼ(日焼け)する(顔は日焼けしないようにガッツリカバーしていたが…)

画像2

私は目尻に小さなシミがある事を気にして、当時これ以上大きくならないよう、外出する際はUVガードを頑張っていたが、ある日パスカルに指摘されてしまった。

「何で毎日メイクしてるのか?」と。
一応周りを見て浮かないように、眉とマスカラくらいの控えめメイクをしてるつもりだったが、ファンデをガッツリ塗っているのが不自然だったらしい。

「シミを作りたくないの!」
「あ、そういえば君、パリで会った時もそこにtache(シミ)があったよね!」と私の目尻を指してなぜかはしゃぐパスカル(怒)
その日、側に居たガエルが私に加勢してくれた。
「私もmitsuyoと同じでシミを作りたくないわ!ソバカスが出来るのもイヤ!」

するとパスカルはムッとして、
「何でだ、ソバカス可愛いじゃないか!君たちはおかしいよ。ここはオーストラリアじゃないんだ。安全だよ!」

画像3

ビーチは風が強く、油断してると砂が顔を直撃する。
段々退屈してきて、帰ってモンペリエで食事しようと言うことになった。

砂まみれの凸凹の自転車コースはキツかった。
ウェッジソールだったので益々しんどい。
フィリップ君の後に追い付くのが大変で、油断した一瞬、風が吹いてきて目に砂が入った。
あっ!と思った瞬間、コンタクトレンズが外れた(その頃はハードレンズを使用していた)
フィリップ君も引き返してきて一緒にレンズを探したが、強風の中の砂の上では見つかる筈もない。

帰りの車の中で、コンタクトレンズが海外でも買える買えないで口喧嘩になってしまった…

処方箋さえ有ればレンズは海外でも購入出来る。それはそうかも知れないが、たかがひと月の滞在に処方箋など持って来てはいなかった。
(裸眼時の眼鏡はあったが…)

「じゃあ日本から処方箋をFAXして貰えばいいよ!」

呑気に答えるフィリップ君にイラだってしまう。この人があんなにドンドン自転車で先に行かなければ…

それに、日本からどこにFAXして貰えと言うのか。そもそも日本では診察時にしか処方箋は出ないし(そういう認識)漢字で書かれた処方箋で対応して貰えるのか?

今思えば落ち着いてやって見たら不可能でなかったかもしれない。
しかし左右の視界が不揃いのまま、全身砂まみれとなった私は、またしても余裕がなくなっていた。
出発前の待合せで知らない駅でかなり待たされたのも、自転車に乗ると知っていたらスニーカーにしたのに等々と、何かと水を差す事が多いのも拍車をかけた。

たった2日前に偶然知り合った外国人にこんなに良くしてくれていたのに…

フランス語もおぼつかないくせに、異国から来た自分は親切にして貰って当然のような図々しい奢りが私にもあったのだ。


その夜は中華かアジアチックなレストランでごはんを食べて別れたと思うが、なぜかなかなか店に入れて貰えず(曜日のせいだけで無く…)視界も定かでなかったので、ほとほと疲れた記憶しかない…

気まずくなってしまったのは確かだ。
もうそれきり会わなくなってしまったのだから…

画像4


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?