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モンペリエへ

4週間南仏・モンペリエの語学学校のクラスを取ることになった私は、1週目に間に合うよう6月最後の週末に日本を出発した。

予め旅行会社で往復の航空券と、パリからモンペリエまでのTGVのチケットを予約していたので、香港での乗り継ぎ便が遅れてしまった時はパリで予定の列車に乗れなかったら?と、かなり焦った…。

CDG空港に到着すると、バス乗場まで猛ダッシュし、(南へ向かう列車の出る)リヨン駅!リヨン駅行きバスはどれですか?と血相変えて聞きまくった気がする…💦

何とか列車の時間に間に合ったので、リヨン駅構内でハムとチーズだけを挟んだバゲットサンドとオランジーナを買い、人生初のTGVに乗り込んだ。

モンペリエまでの3時間半、この後に及んでフランス語の基本的文法と、パスカルさんに聞いておくべき質問を車内で必死にまとめていたのを思い出す…
(今思い返すと失笑だが、ゴミの分別方法とか、洗濯機の使い方とか…今はどうか知らないが、当時はさほどゴミも分けて無かったし、洗濯機の準備も無かったので結局はコインランドリー使用だった)

ついに列車がモンペリエ駅に着く。心臓が口から飛び出そうなくらいドキドキしていた。

駅で待ってると言ったパスカルさんはどう出迎えるのだろうか…私の顔をちゃんと覚えてるだろうか…

エスカレーターでホームから改札階に上がると、天井の高い広々とした駅待合所があった。

夏休みということもあり、待合所のベンチ周りは大きな荷物を持った海外からの学生でいっぱいだった。到着したところか、帰るところか、ホテルに泊まるのかしら、学生寮に入るのかしら…

しかし、列車が定時に着かなかったのもあるが、パスカルさんらしき人が見当たらず…

下手に動かない方がいいとベンチの真ん中辺に座って待っていると、、、黒髪の東洋人ばかりやたらと覗きこんでる背の高い白人男性がいる。

あれ…

クルクルの巻き毛をを短く刈り込んだパスカルさんだった。

余りにアジア人ばかり覗き込んでるので、私から近づいて声をかけた。
(そもそも半年前は私、髪を栗色に染めていたんですが…)

「パスカル」「!mitsuyo」

左右の頬に挨拶のビズ。

「Ça va?T’as fait un bon Voyage?」
(いい旅だった?)

「Oui. …列車が遅れちゃって…髪を切ったのね」
「うん、暑いからね。さ、行こう」

駅を出るとそこは南国だった。(川端先生のパクリではなく…)
駅から真っ直ぐ伸びた大通り沿いに、背の高い椰子の木が果てしなく並んでいる。

パリと違って空が蒼い、太陽を遮る雲が無い。

「アメリカみたい…(行ったことないけど)」

「うん、ここはフランスのコースト(西海岸)って言われてるんだ」

パスカルが私のスーツケースを押しながら得意げに答えた。

駅前広場を抜け、さらに次の通りを抜けると、白いパラソルで日陰を作ったカフェテラスのある広場に出た。

そして広場に面した石造りの建物の門を開けると、中庭のあるコの字型の古いアパルトマンが現れた。

ひんやりした石壁に覆われた階段を登り、二階の大きなドアの前にパスカルがスーツケースを置いた。
「ここ?」「Oui 」

ガチャガチャと大きな鍵で扉を開けると、ニッコリ笑ってパスカルが言った。
「着いたよ。bienvenue à Monpellier !
(ようこそモンペリエへ!)」

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