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2 彼女の名前はハルと言った。 まるで「2001年宇宙の旅」に出てきたコンピューターのようだ。 そう言えば「2001年宇宙の旅」は、20世紀に作られた21世紀の映画だ。ハルは彼女の名前にぴったりだった。
3 僕がハルのことを自然に受け止めることができたのは、僕が空想の世界を好きだからなのだろう。 僕はよくぼうっとして、色々な空想をする。映画が好きで、たくさんの映画を観る。本が好きで、たくさんの小説を読む。だから現実にはありえないことであっても、僕にはそれを受け入れることができるのだ。
5 ハルと一緒にいると、僕はノスタルジックな気分になった。 昭和の時代は、古き良き時代だった。優しい時代だった。
6 それは、まぎれもなくハルだった。 その写真に写っていたのは、まぎれみなくハルだった。 僕は思いだす。
7 ハルを20世紀に返す方法はないだろうか、と僕は思った。 だけども「バック・トゥ・ザ・フューチャー」じゃないんだから、それは無理な話だ。 ハルの時代は、まだ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は公開されていない。ドクはこの世界にはいない。
8 「ビートルズの新曲が出たんだ」 と僕はハルに言った。 「え? ジョン・レノンは4年前に亡くなったわよね」 とハルは言った。 そうか、4年前か。ハルにとってジョンの死はさほど昔のことではないのだな、と思った。