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短編小説

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僕の短編小説集です。
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#恋愛小説

ロウとコウ

 ロウはコウの幼馴染だ。  小学校3年生のときに、ロウはコウの通う小学校に転校してきた。  ロウは帰国子女だ。イギリスから日本に帰ってきた。 「僕はロウです。ジュード・ロウのロウです」  とロウは自己紹介をした。  しかしクラスメートは誰一人ジュード・ロウを知らなかった。 「柔道のロウ?」  とみんなに誤解され、それからロウは「柔道のロウ」と呼ばれるようになった。  しかたなくロウは柔道を習うことになった。  中学校のとき、コウはロウと付き合うことになった。  ロウはモテ

秋の来ない恋

 彼女の恋は夏に始まって夏に終わる。  決まってそうだ。  夏の暑さのなかで情熱的に燃え上がり、夏の終わりとともにそれは終わりを遂げる。  秋の来ない恋。  彼女の恋は、そんな恋だ。  彼女の恋に、秋は来ない。  僕と彼女の恋は、花火大会で始まった。  それは夏の終わりのイベントだった。  本当だったら彼女の恋が終わるとき、僕らの恋はスタートした。  それは、予期せぬ出来事だった。  ビートルズの「抱きしめたい」は、「I wanna hold your hand」という

映画とスタバ

「ねえ、今度の日曜日、映画を観に行かない?」  と僕は彼女を誘ってみた。  やってみた企画、みたいなノリだ。  いや、違う。ユーチューブだとかなんだとか僕はやっていないし、それは単なる気まぐれでしかなかった。 「え、何でよ?」  と彼女は驚いた表情をして僕を見た。そりゃあそうだ。そうなるよね。想定内だ。その通り。それが正解。だって彼女とはろくに話をしたことがないのだから。 「いや、ただ映画を君と一緒に観たいと思って」  と僕は続けた。 「映画は観るけど何であなたと一緒に