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短編小説

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僕の短編小説集です。
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2021年7月の記事一覧

僕が君と過ごしたという証

 僕の鞄の中から一枚の紙切れが出てきた。  それは映画のチケットの半券だった。  それを見て、僕は朋美の事を思い出す。  僕と朋美の関係は、ちょっと不思議なものだった。  二人とも映画が好きで、インターネットのブログを通して僕らは知り合った。  何と言うか、僕と朋美は奇妙なところが似ていた。  それは、映画は一人で観に行くものと決めているところだった。  観る映画のタイプも、趣味趣向も、考え方も、まるで違っていた。  だけどお互いに変わり者が好きだというところが似ていた。