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「葬送のフリーレン」と「夜と霧」

葬送のフリーレンという漫画をご存知でしょうか?かつて勇者とともに、魔王を倒す旅をした魔法使いが、勇者亡き後の世界を旅するという物語です。魔法使いフリーレンは勇者と旅を続けるうちにいつしか大魔法使いと呼ばれるようになります。

エルフ族だったフリーレンは、人間やドワーフであった他の仲間より長生きすることができました。魔王との旅のあと、仲間だった勇者、その他のメンバーも年老い、この世から1人づつ去っていきました。

フリーレンには、玉石混交の魔法を集めるという収集癖があり、旅にでかけます。
再会した勇者はすっかり年老い、やがて亡くなります。勇者や他の仲間と旅した跡を辿る中で、新しい出会いや、過去のたわいもない思い出が蘇ります。ただ、このたわいもない思い出はフリーレンの心をいつも潤すのです。

仲間と魔王を倒すために旅していた当時、フリーレンには人の気持ちがよくわからなかったけれど、旅の中で勇者や仲間達が自分に諭し、教えてくれていたことを追体験として理解していきます。

フリーレンの決断や選択は、地位や名誉を重視したものではなく、自身の気まぐれとも思われる価値観、思い出を基準にしていたりします。

こういったフリーレンの態度に、ヴィクトール.E .フランクルが「夜と霧」で紹介していた体験価値、それから態度価値というものを感じます。

体験価値とはその名の通り、体験を通して得られる価値です。

人が自然の美しさを体験したり、恋愛をしたり、人の優しさに触れて感動したり、さまざまな経験を通して得られる価値です。

態度価値とは、病気や死など避けることのできない運命に対して、どんな態度をとるかという人間の尊厳価値です。

大魔法使いになってしまったフリーレンには、もはや地位や名誉はどうでもよい扱いになっていますが、かつての仲間と過ごした中で得た感情はとても大切にしています。
彼女はとても体験価値を大事にしているのです。
そしてかつては感じることのできなかった人の気持ちを、改めて理解し直していこうとする彼女の態度には、態度価値を感じます。

フランクルはこの2つに創造価値を加えた3つの価値を追求することで幸福に近づくといっていますが、フリーレンがやっていることは、まさに体験価値と態度価値を慈しむことそのもののように思えます。

もしこの2つの作品を読んでない方は、両方とも名作なので、是非手にとってみて下さい。

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