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【 太陽と月の物語①】:太陽暦と太陰暦

時間とは、人が人との行動のタイミングを調整する社会的な感覚の基準である。
これが2人の人間が目の前の獲物を狩るためにちょっとしたタイミングを図るだけであれば、なにかの合図を基準として時間を調整すればよい。
しかし一日、一ヶ月、一年、社会的な時間、さらには世代を超えた時間を測るともなれば、より多くの人々、さらには未来の人々が共有できる確かな基準が必要となる。

そこで人は太陽と月に注目した。
そして、【太陽の高低】と【月の形】の観察によって世代を超える「年」という「時間」を創造することとなる。

太陽暦とは、太陽の高低、つまり太陽がもとの高度に戻るまでの周期を一年として測る技法である。
そのため、地球が太陽の軌道を周回する周期が基準となる(*現在は約365.24218896日:2023年 中央値)。

一方、太陰暦というものがある。
太陰暦は、月の満ち欠けを基準とする時間軸である。
つまり、新月と満月の一ヶ月のサイクルによって周期を測る技法である。
月の満ち欠けを基準とする場合、一年はおよそ354日である。
だが、そうするとこれは地球の公転周期、つまり地球が太陽の軌道を周回する周期約365.24218896日(2023年 中央値)よりも11日ほど少ないことを意味する。
そのため太陰暦は、およそ8年で季節一つぶん(88日)がズレることとなり、33年で四季が一回りズレていくことになる。

さて、では太陽暦と太陰暦ではどちらが優れているのであろうか?
向き不向きで言えば、まず、長期にわたる同月同日の季節の一致を重視するのであれば太陽暦の精度が高い。
一方、カレンダー上の月日の一致(単純な時間の経過)を重視するのであれば月の形(月相)によって明らかな太陰暦の精度が高い、ということになる。

だが、この説明でも明らかなように太陰暦は、とくに農業において死活問題とも言える季節の把握という点が大きな足枷となる。
そこで、太陰暦に閏月を加えることで季節のズレを解消したものが太陰太陽暦と呼ばれる方式である
(*ただし、太陽暦も単純に運用するとズレが生じてくるため、閏月とまではいかなくとも「閏日」が必要となる。詳細は後述)。

現在、日本では太陽暦のグレゴリオ暦が採用されているが、かつて日本を含めて東アジアでは太陰太陽暦が採用され、旧暦として今なお活きているとも言える。

また、イスラムのヒジュラ暦は純粋な太陰暦であり、季節のズレを許容する暦となっている。

*次回、「閏月」と「閏日」

*参考資料など

【地球の公転周期と太陽について】
『天文年鑑2023年版』p202
太陽年:365日5時間48分45.126秒 = 31556925.126 秒 = 約365.24218896日

*そのほかwikiの「太陽暦」・「太陰暦」・「太陽年」などを参照。

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