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【太陽と月の物語②】閏月と閏日

太陽と月は、人にとって「時間」の絶対的な基準である。
だからこそ太陽の高低で判断する太陽暦、そして月の形で判断する太陰暦と呼ばれる「年」という「時間」の単位が生まれたのだ。

だがじつは、太陽の高低も、月の形も絶対ではない。
地球を含めた天体の運行は常に変化し続けている。

太陽暦は、たしかに季節を知るうえでは精密な「年」を測る技法であるが、それでもやはりズレから逃れることはできない。
現在、太陽周期は「約365.24218896日(2023年中央値)」であるが、この「365」日の小数点以下、端数が問題となってくる。もし1年を厳格に「365日」であるとしてしまうと、わずか4年で1日弱ほどズレてしまうのだ。
結局、太陰暦だけでなく、太陽暦もまたズレを克服しなければならなかった。

前回、月の形で「一年」を測る太陰暦は、11年で季節が1つズレるという話をした。
季節を把握できなくなることは農耕文明にとって致命的である。
そのため、太陰暦を伝統とする地域では、本来の太陰暦に「閏月(うるうづき)」と呼ばれる「月」を数年に一度追加することで、季節と暦を一致させるための調整が行われてきた。太陰太陽暦と呼ばれる方式である。
東アジアで「太陰暦」と言われるものは、この太陰太陽暦を指すのが通例である。

一方で先ほど述べたように誤差が少ない太陽暦もまた、〈太陽の周期〉と人間から見た「一日」の微妙なズレから、4年で1日がズレていく。
それでも〈日の出〉と〈日没〉を「一日」として数える限り、どうしても一年は「365日」という整数で表現せざるを得ない。
「一日」に小数点以下の端数を加える訳にはいかないのだ(*つまり約365.24218896日の〈0.24218896〉の部分」。
そこで太陽暦は、「閏日(うるうび)」とよばれる「日」を数年に一度追加することで、季節と暦を一致させる調整を行うことになる。

さて、ここまで太陰暦のズレを克服する「閏月」と、太陽暦のズレを克服する「閏日」について触れてみた。
見落としてはならないのが、それでも結局、過去に設定された太陽の高低と月の形が基準として生き続けているということだ。
たしかに太陽や月と地球の関係は絶対ではない。故に太陽の高低と月の形から見える「年」と季節はズレてしまう。
だが、だからこそ人々は過去と未来をつなぐ「時間」を守るための努力を積み重ねてきたとも言えるのだ。「閏月」と「閏日」は、その証でもある。

*次回、「季節」


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