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障害物長距離走

美容院がどうも苦手だ。

カットはまだいい。30分あればだいたい終わるから。でも縮毛矯正はものすごく腰が重い。あれってだいたい3時間かかるんです。

私は天然パーマなので、前髪も襟足もくるんくるんと髪が跳ねる。一生懸命ヘアアイロンで伸ばしてなんとか真っ直ぐにするのだが、いくらヘアスプレーやワックスを使っても1歩家の外に出れば、また跳ねる。雨の日なんて、そもそもはじめから髪が真っ直ぐにならない。中学時代は「バッハ」と呼ばれたこともあった。(失礼な、と思いながらもピッタリすぎて一緒に笑ってた)

この跳ねる髪を真っ直ぐにしてくれるのが縮毛矯正だ。縮毛矯正をした後の髪は、とても扱いやすい。ヘアアイロンをしなくても外出出来ることのありがたさたるや。

私がなぜ美容院が苦手なのか。その理由は、簡単。美容院がキラキラしているから。美容師さんは、みんなかっこよくて、みんなかわいく見える。そんな場に長時間いると、こんなキラキラな場にいてごめんなさい、と卑屈になっていく。イケメンと美女がにこやかに話してくれて、飲み物を持ってきてくれて、マッサージまでしてくれるから恐縮しすぎてどんどん猫背になっていく。

向こうさんもお仕事で一生懸命してくれるから私も「応えなきゃ」と雑談を必要以上に弾ませてみたりもする。だけど、なんとか切り出した話題をドライヤーの音にかき消されて1人でしょぼくれる。担当の美容師さんが自分以外のお客さんと楽しそうに話していると少し切なくなる。アールグレイティーとアッサムティーの違いがわからない。「仕上がりどうですか」と鏡越しに言われるが、鏡に映った自分を真っ直ぐ見られない。「私はこういう表情してるときの自分が1番綺麗に見えると思ってます」の顔をして鏡を見なければいけないから。私にとって美容院は、障害物長距離走。

そんな私だが、つい先日久しぶりに美容院で縮毛矯正をした。結果的に縮毛矯正して大正解。髪が扱いやすいのなんのって。ありがとう、美容師さん。

生きやすく生きていくために、ある程度のナルシシズムを持てたらいい。「私かわいい」と自分に催眠をかけると、美容院はとても楽しい場所になるんだろうな。

#コラム #縮毛矯正 #美容院

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