八重歯と腹毛

私は頭のてっぺん(髪の毛)から足の先(足のサイズが大きい)までコンプレックスまみれの女だ。

学生の頃なんかは白い肌に真っ黒い髪、赤い唇が梅干しの乗ったのり弁みたいで嫌いだった。(今思うと意味がわからない)

うねる剛毛には長年悩まされてきたし、足は数年前24cmを店員さんに勧められるまで自分は25cmとか、酷いと男性用しかサイズがないと思い込んでいた。残念ながらくせのある厄介な剛毛は思い込みではないしその他のコンプレックスは20代半ばになる今も健在だ。

コンプレックスのうちの一つに歯並びがある。ものすごく出っ歯とかガタガタってわけじゃないけど、前歯の左上だけが前に出ていて、犬歯は左右ほぼ対称に鬼っぽくなっている。(かっこよく言った)どうしても気にしてしまってうまく歯を出して笑えなくなっていたが、彼氏の一言で変わったのだった。

ある日、お互いの好きなところを言い合うゲームをした。その時、彼氏の口から真っ先に出てきたのが｢笑った時に見えるこの歯(八重歯)｣だった。私には一瞬なんのことか分からなかった。この私が？歯を？良いと思われている？？？私より歯並びの綺麗なこの人に？？衝撃だったし、とても嬉しかったのを覚えている。それから少し後、同僚の女性にも満月さんの八重歯かわいいねと言われ、もうすっかり歯を気にせず口角を上げて笑えるようになった。

世の中には多額のお金をかければなくせるコンプレックスは沢山あるけど、そうしないと必ずしも不幸ということではないのかな。自分が気にしているよりも他人は自分の欠点よりいいところを見ていることもあるんだなぁ。と、救われた気持ち。

ところで、彼氏はおちょぼ口を気にしている(コンプレックスというほどではなさそう)様子が見受けられたが、私は思い切り笑っても上品な歯の見え方をする彼の小さな口が最高に素敵だと思っている。なんなら頭のてっぺん(髪)からつま先(足の形、なぜかすべすべな足の裏)まで全てが好きだ。大好きだ。

初めて見た時にはびっくりした腹毛(身近な男性である父が極端に体毛の薄い人だったので見慣れていなかった)も、今となってはお腹を触る際のいいアクセントだし、盲腸の手術痕から2本生えているのもおもしろ可愛い。もうなんだって好きなんだと思う。