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プーさんのハニーハントは革命児であり異端児である

※以前ツイッターで投稿した文章の再編集、加筆版となります

「プーさんのハニーハント」は2000年に東京ディズニーランドにオープンした。今からなんと20年も前である。

このアトラクションの一番魅力的な所は何と言ってもそのライドシステムにある。一般的に「トラックレスライド」と呼ばれる、線路が無い平らな地面の上をライドがプログラムされた通りに動くという世界のディズニーパークでも初めて導入されたシステムである。同時期に海外パークで「プーさんの冒険」ほぼという同様のストーリーで白雪姫やピノキオのように乗り物がレールを動くタイプのアトラクションがオープンしていたが、プーさんのハニーハントはライドシステム一つでアトラクション体験を格段に向上させてたと言っても良い。


プーさんのハニーハントではトラックレスライドのシステムを用いていくつかの今までに無い演出を可能にした。

一つはアトラクションが始まってすぐの「風が強い日」のシーン、ここでは一度に複数のライドを部屋に入れライドの回転、プーや森の仲間たちのAAの動き、音声をシンクロさせることにより、一つの部屋ではちみつを取ろうとしたプーさんが森の仲間たちに会いながら風に流されていくと言う一連のストーリーを描くことに成功している。

次にティガーが飛び跳ねるシーンである。ここではライドに線路が無いのをいいことに、なんと床自体を上下させてジャンプを表現している。初めてのライドシステムでここまでの演出ができたのは凄いことだが、やはりシステムがデリケートなのか日によっては床の上下が起こらないことも多い。

最後が一番凄い、眠りについたプーさんが蜂蜜泥棒のズオウとヒイタチの夢を見るシーンである。このプーさんのハニーハントというアトラクションは3つのライドが1セットとなって進むのだが、このシーンでは一時的に別のグループと合流し、合計6つのライドが動き回ることになる。1つのグループが来てしばらくしたら前のグループが抜け、後のグループが入ってくる。その間にもライドはズオウの写る鏡や蜂蜜の大砲へのスタンバイをし、演出後回転や移動を繰り返す。これが全てプログラムされているっていうんだから恐ろしい物である。



これほど力の入った素晴らしいライドでありながら、実は東京ディズニーランド以外のパークに輸出されていない。しかし東京ディズニーリゾートで作られたオリジナルアトラクションが他のディズニーパークに作られたことが今まで一度もないので、これ自体は珍しいことではない。

面白いのは、これほど革新的な「トラックレスライド」というシステムが東京ディズニーリゾート以外のディズニーパークに作られるようになったのは2013年に香港ディズニーランドに作られた「ミスティック・マナー」からであり、実にプーさんのハニーハントのオープンから13年も経ってからだったことである。(東京ディズニーリゾート内では、同様の技術を用いた「アクア・トピア」が2001年に東京ディズニーシーと共にオープンしている。)

何故13年も経ったのか?トラックレスライドのシステムが日本独自で開発したものだったとか、そうでなくても共同開発したOLC側にある程度システムの権利があるからだとか、色々噂が飛び交っているが、どちらにしてもOLC側がシステムを何年間か独占できるような契約は行われていそうである。ディズニー側がトラックレスのシステムを使ったアトラクションの構想に10年もかかったからという可能性も無くはないが、2013年の「ミスティック・マナー」の後、2014年の「レミーのおいしいレストラン:ザ・アドベンチャー」、2016年の「ルイジのロッキン・ロードスター」と続々とトラックレスの新アトラクションが海外パークに登場しているのを見ると、やはり何かの期限が切れたと見るのが妥当だろう。


さて、世界的にはまだ5年ちょっとしか展開されてないトラックレスライドだが、最新オープンしたスター・ウォーズエリアの目玉「スター・ウォーズ:ライズ・オブ・ザ・レジスタンス」や今年オープンしたばかりの新アトラクション「ミッキーとミニーのランナウェイ・レイルウェイ」などにも使われ、今までのライドシステムじゃできなかった新しいライド体験を生み出し続けている。そして意外なことに東京ディズニーリゾートでは今まで2000年の「プーさんのハニーハント」と「アクア・トピア」以外のトラックレスライドがオープンしてこなかったのだ。

あれから約20年、そんなトラックレスライドが遂に東京ディズニーリゾートに帰ってくる。東京ディズニーランドに新しくオープンする「美女と野獣:魔法のものがたり」は久しぶりの東京ディズニーリゾートオリジナル大型アトラクションで、10人も乗れる大型のトラックレスライドに乗って最新のアニマトロニクスで作られたキャラクターたちが彩る美女と野獣の世界を体験できると言うんだから楽しみである。新型コロナウイルスの影響でオープン日は未定だが、オープンすれば東京ディズニーランドを代表するアトラクションとなるであろう。

というか4月の15日にはオープンしてたはずなんだけどなー。もう乗れてたはずなんだけどなー。くそう。

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