フリーランスは正社員の2倍稼がないといけない説について、考えてみた
この記事は、2022年に公開し、2024年4月に試算の詳細を更新しました。
先日、令和3年分の確定申告&所得税納税を済ませました。
申告をキッカケに1年を振り返ると、今期は3期目となり、案件獲得に試行錯誤していた1〜2期目と比べると、比較的安定して収入があったと思います。
clubhouseで知り合ったことがキッカケにお仕事に繋がったご縁や、これまでのお付き合いから継続していただいたりと、昨年もありがたい一年でした。
今回、申告をしながら「結局、フリーランスエンジニアは正社員の何倍稼ぐと割に合うのだろう」とふと気になったので、この期に徹底考察してみることにしました。
元経理事務員・現フロントエンドエンジニアの私は、個人的にもお金の計算は好きです。(TEDORIなんてアプリ作ってしまうくらい。)
この趣味(?)が、誰かの役に立つこともあればと思い記事にしたので、気になる方は是非読んでみてください。
はじめに
フリーランスと正社員の比較時に「安定(勝者:正社員)」と「自由(勝者:フリーランス)」が語られることが多いかと思いますが、エンジニアの場合、大きな差分はないのではないかと考えています。
終身雇用の崩壊もそうですが、元々Webエンジニアの流動性が高いことや、雇用契約でもフルフレックス、フルリモートの企業さんが増えている中、その差分は年々縮まることでしょう。
案件を通じて得られる経験や仕事を通じての出会いなども、フリーランスをしてきて得られた貴重な体験ではありますが、副業OKが浸透した今、それをフリーランスの特権とはいえないと感じています。
はい、正社員エンジニア&副業が最適解(税制度的にも◎)です。と言いたくなるところですが、今回は副業なし正社員とフリーランスエンジニアの収入について比較していきます。
大きな差分はないと言ったものの、社会保障の面で、雇用契約に対して1点とても魅力に感じているものがあります。
それは、雇用保険です。
雇用保険からは、育児休業給付金なども支給されますが、今回はそのうち、失業手当の恩恵を受けた場合の金額も加味して比較してみます。
所得によって税率も受けられる控除も変わってくるので、どのケースにも当てはまる方程式というのは現実的ではありません。
今回は平均的なエンジニアの収入をベースに考えていきたいと思います。
今回の計算に用いた前提条件は下記になります。
扶養親族:なし
就業地:東京
年齢:30~39才
試算内容
1 正社員の平均手取り額を定義
まずは、比較するための基準値を定めます。
今回は、経済産業省のIT関連産業の給与等に関する実態調査結果(平成29年)から金額を引用します。
こちらの資料によるとエンジニア/プログラマの年収平均は592万円でした。
私が思っていたより高かった・・・
同資料によると、スキル標準レベル3・独立して仕事ができる中堅人材レベルの平均年収が576万円で全体の平均値に一番近いので、こちらの年収は中堅スキルの人材をイメージするのが良さそうです。
上記を参考に、ここでの計算は、年収600万円の場合の手取り額を算出していきます。
ということで、正社員エンジニアの平均手取り額を4,588,800円とします。
2 同額の手取り額になる利益額
上記で算出した正社員エンジニアの平均手取り額を4,588,800円と同額を得るために必要な売上は一体いくらなのか、計算してみましょう。
まず、フリーランスの場合は、必要経費も定義する必要があります。
会社員と違い、業務に使用するPCやデスク周りの機材を自分で揃える必要があり、それはもちろん経費になります。
PCについては、参考資料とかではなく独断ですが、今自分が選ぶなら、MacBookProの16インチを選ぶと思うので、この金額を参照します。
価格は398,800円になりますが、減価償却の対象(耐用年数5年)なので、1年あたりの経費は、79,760円です。
デスク周りや検証用デバイスなどは、人や担当領域によって異なりますが、年間20万円と仮定します。
他にエンジニアにとって、大きい支出は、通信費でしょうか?これも人によって様々ですが、年間20万円と仮定します。
その他に、会議費、交際費、教材費などがありますが、こちらは収入の5%で定義してみます。
はい、経費は最低限の計算なので、実態とかけ離れていないか心配です。汗
もちろん、青色申告&電子申告でMAXの65万円の控除と想定し、下記の結果になりました。
収入-経費した金額が658万円の時に、年収600万円の正社員とほぼ同じ手取り収入になることがわかりました。
もちろん、フリーランスだと、節税や経費の算出でこの金額がいかようにも変わるのですが、一つの基準になるかと思います。
こう見てみると、2倍どころか、1.5倍も必要としないことがわかりました。
しかし、この場合、正社員が受けれる恩恵の雇用保険分が加味されていないので、次に続きます。
3 失業保険を加味した場合
フリーランスには雇用保険がないので、仮に失業した場合、正社員だったら受け取れた金額分を加算して計算してみようと思います。
失業保険を算出するには勤続年数を定義する必要があるのですが、資料によって12年だったり、「エンジニアの約7割は3年以内に転職」だったり、まちまちでした。
国の資料に基づくと12年の方で計算したいところですが、私の周りの実態とちょっとかけ離れている気がするので、今回は5年で計算してみます。
年収600万円だと賃金日額は上限金額になるので、10年未満の勤務の場合、
最大受給額は、下記になります。
29歳以下 625,050円
30〜44歳 694,350円
45〜59歳 764,100円
フリーランスは事業継続期間中に、上記分の蓄えを上乗せで行うことで、失業保険を受給できない分の補填になります。
今回は、最大受給額を5年で蓄える想定で、再度必要な収入を計算してみます。
収入-経費した金額が650万円の時に、正社員の手取り4,588,800円+失業保険受給額補填分138,870円の4,727,670円に近い金額になりました。
ここでもやはり、正社員年収の1.5倍にも満たなかったですね。
次は、消費税支払額も加味して計算してみます。
4 適格請求書発行事業者の場合
インボイス制度を受け、適格請求書発行事業者の登録をした場合、上記の収入だと簡易課税を選択できるので、簡易課税での消費税額を念頭に入れましょう。
エンジニアの場合、簡易課税だと課税売上の50%がみなし仕入れ率となるので、(課税売上*50%)÷110%×10%で支払う消費税が試算できます。
消費税を加味した結果は、下記になります。
消費税がおよそ37万円となりました。汗
結果
ざっくりの計算ではありましたが、結果は下記の通りです。
正社員の平均年収を600万円と仮定
単年での比較だとフリーランスに必要な利益は、658万円
雇用保険受給分を貯蓄する場合の必要な利益は、682万円
消費税も払うなら、収入の更に約5%追加で必要
経費を約90万円と仮定するなら、フリーランスの売上807万円で正社員600万円と同等の手取り額になる
最後に
上記の結果はいかがでしたか?
冒頭にも述べましたが、所得によって税率が変わるので一概には言えませんが、今回算出した年収前後であれば、正社員年収の1.35~1.5倍の売上を目標に考えてみると良いのではないかと思いました。
エンジニアの場合は、やはり「正社員の2倍稼がないといけない説」は違いますね。
計算前からそれ自体はわかってはいましたが、具体的な数字を算出してみて、個人的にスッキリしてます。
年間売上807万円となると、月単価67.25万円が目安になりますね。
これからフリーランスエンジニアを目指す方や月単価を上げたい方の目標値の目安にしていただくのも良いかも。
経費の見積もりが甘い、他にも加味するべき収支があるなど、ツッコミどころはあるかと思いますが、あくまで一計算例として参考にしていただけると幸いです。
最後まで閲覧いただき、ありがとうございました!
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