シューアイス

シュークリームがない。
僕がどれぐらいシュークリームを好きかというと、
たぶんシュークリームの中で寝られるぐらいである。
実際、あのクリームを寝床にして、上からシュー生地を
掛け布団代わりにして寝ることを想像しただけで、
もう眠くなってくる。

ということは、シュークリームがないというのは
たいへんな事件なわけである。

冷蔵庫を探し、棚を探し、念のため家族の部屋も確認したが、やはり見当たらない。よく考えると、家族だって僕のシュークリーム好きを知っているはずだから、勝手に食べるなどという勇気ある行動を取るはずがない。

まさか、と思って2段構えの大きな冷凍庫のドアに手をかけ、
あるはずがないと半分以上疑いながら開けてみると、
冷気とともに大好きなシュークリームが姿をあらわした。

ああ、こんなところにいたのか。

しかし次の瞬間、安堵よりも先に不安が胸をおそった。
あのとろとろのクリームはもしかして固まってしまったのではないか。
とろけるような舌触りが、まるで正反対のゴツゴツしたものに変わってしまったのではないか。

でも僕は、せっかく再会したシュークリームと向き合おうと思ったのだ。
どんな結果になってもいい、ちゃんと食べてやろうと。

乾燥して少しパサついたシュー生地を通り、いよいよ心待ちにした
クリームと出会う。
まるで、昨日も会った女の子が今日はまるで違う人になっていたような
別の印象が僕を包み込んだ。

ああ、おいしい。

というのがシューアイス誕生の秘話かどうか、
僕にはわからない。




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