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聖母子像、ふたつ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展
http://www.davinci2016.jp/

ボッティチェリ展
http://www.tobikan.jp/exhibition/h27_botticelli.html

で、聖母子像を見てきた感想です。

《糸巻きの聖母》(部分) 1501年頃、油彩・板、48.3×36.8cm、バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト
© The Buccleuch Living Heritage Trust

『書物の聖母』1482-83年頃 ポルディ・ペッツォーリ美術館蔵©Museo Poldi Pezzoli, Foto Malcangi

聖母子を描いた作品は多く、ルネサンス期には貴族の邸宅に飾るのが流行っていたそう。

題材は宗教画ですが、個人のリクエストで制作されたためか、教会に置かれるような公共の作品より親しみやすい雰囲気でした。

サイズ小さめ。でも、密度が高い!

作品全体の完成度で見ると、『書物の聖母』は誠に素晴らしかった。
背景も、クッションのふさのような静物の細部も、金彩の光輪も、本当に美しい!
聖母子もブロンズヘアーの気品溢れる美形!

他の聖母子像を見ていて思ったのは、ボッティチェリさん、色んな顔立ちを描きわけてるのね、ということでした。
モデルがいたり、クライアントの趣味に合わせたりということなんだろうと想像します。

当時の作品は大半が工房で共同制作だそうですが、ご予算によって師匠の描き込み量も増減…まるで現代の建築事務所・デザイン事務所と事情が変わらないのが面白いです。

この絵には材料も高価なラピスを使ったり、手の込みようが違うので、クライアントのご予算も相当高かったでしょう。ボッティチェリさんの巨匠魂を込めまくった作品。

こんな絵を飾るお屋敷は、さぞかし瀟洒で豪華だったでしょうね〜、ウットリです。


対して『糸巻きの聖母』は、人物の露出した部分だけが静謐な強いパワーを放っていて、作品全体としてはアンバランスな印象でした。

背景や聖母の衣のあたりは遠くから見ると、どうなってるのかいまいち解りづらく「???」

近くで見ると、衣装がペターっときっちり塗り分けられたようになっていて「あ、ここはレオナルドさんの筆じゃないんだね」と解りました。
ちょっとこれはどうなのか?レオナルドさん的にはこれって有りなのかな?

しかし、それでもなお、この『糸巻きの聖母』は本当に素晴らしい作品だと感じました。

自分でも意外でしたが、人物のパーツがものすごい説得力を持って迫ってくるので、(この親子が歩む人生、過酷な死別、それさえも受け容れる神の道への揺るぎない信念、神聖さ、などなど)そのことに感動したのです。

感動のあまり、あとの部分は割とどうでも良くなってしまって(というと失礼ですが)気にならない。それぐらいレオナルドさんの描く人物は、深いなぁ…と、しみじみ。
観れてよかったと思いました。


どちらの絵も、個人のお屋敷で真摯な祈りを捧げられてきたことでしょう。

巨匠がどのくらい筆を入れたか、はその方々にとっては、大して重要ではなかったろうな、と。

他にもたくさん、教会にあった祭壇画なども含め、いろいろ展示してあり、似た構図のもの、模写もたくさんあり…
オリジナルとか、コピーとか、意匠権とか、クレジットがどうとか、そんなこともユル〜かったろうな、と。

皆んなでどんどん描いて、作って、飾って…そんな豊かさを感じられた展覧会でした。

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