「顔の味」


 過去から現在へ色々な顔が存在し、またこれからも存在し続ける。
 色々な人種毎の特徴もあるが、同じ日本人でもそれこそその種類は千差万別だ。日本人なのに海外旅行をするとどこか別の国の人と思われたり、最初からおまえ日本人だなと言葉を発しない前に見破られたり、男女関係なくこんな経験はそこらじゅうにあるだろう。
 韓国では日本以上に整形への依存が高く、女性でそれを考えない人はいないと聞いたことがあるが本当なのだろうか。
 自分の顔をつくづくと眺めてみる。丸顔で目は小さく、鼻もだんごで、もちろん美形というにはほど遠い。生まれた時からこれと付き合っているので、もうすっかり慣れているのだが、思春期で女の子にもてたい盛りの頃には、なんでもうちょっとましに生んでくれなかったのかと母親をうらんだこともある。
 今はAIで100パーセント完璧な顔を作ることもできるそうで、検索して、男女のそれぞれのその顔を見てみた。確かに非の打ちどころなくもうこれ以上望むべきところはないと思わせる顔である。
 しかし、である。完璧さは伝わってきても、ただそれだけ。魅かれる、ということが全くないのが不思議だった。
 そしてこれを機に、芸能界の有名な歌手や俳優の男女の写真を改めて色々眺めてみた。
 そしてAI顔の100パーセントに対して、顔のパーツのどこかが100に届かない分、それがアクセントになり、その人の顔の魅力の源になっていると感じた。
 皆さんも改めて色々な顔を観察するつもりで眺めて、どこがその人の魅力になっているか考えるとけっこう楽しいかもしれない。まさかそんな人はいないと思うが電車の中で他人の顔をじろじろ見て魅力を探すようなことはしないでいただきたい。これは蛇足。
 ことは物理的な造形の世界だけにとどまらない。
 その人の魅力、という点で言えば、ただ単に外見だけの問題にとどまらないからだ。
 前に「心の形は顔に」というエッセイで触れたのだが、これはもう今までの経験から自信を持って言えるのだが、心のあり方は必ず長年の間に顔に刻まれるものなのだ。中にはもう生まれた時からの詐欺師で自由に顔を取り繕える人もいるかもしれないし、また才のある演技が上手な顔まで取り繕える俳優もいるかもしれないが、たぶんそんな例は少ないと思う。
 皆さん、自分の顔を鏡に写し、ぜひ魅力に映る一点を探してみてほしい。ひょっとすると、それは一見マイナスにしか見えない部分であるかもしれない。が、マイナスがプラスに、そんな事象は顔のことだけに留まらず、この世間にはいくらでもあるのだから。
 

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