あいトリ 名古屋市への公金支出申請

 あいトリにおいて、「問題とされる作品に税金を投入した!」とか「問題とされる作品を隠して虚偽申請した!」などと問題視する人がおり大村知事リコールの理由にもなりました。
 
 実は、公金支出の申請・承認は、大きな枠(企画全体)に対して行われるのであって、個々の作品のチェックは行われておりませんし法的にもいわゆる「検閲」にあたるため行われるべきではありません。

 したがって、上記の主張は、作品をチェックして公金の支出がされたわけでもなく、また申請の際作品を隠しようもないので、デマだと言えます。

 それは申請書を見ても明らかです。

 また、あいトリに支出された公金は、①愛知県から(愛知県知事が承認)②名古屋市から(名古屋市長が承認)③文化庁から(文化庁長官が承認)です。

 ここでは②の名古屋市支出分の申請から承認について検証します。

 申請書類は、名古屋市のホームページで公開されており誰でも見ることができます。

【ポイント】

1.作品が決定したのは公金支出の承認後です。
2.公金支出を承認する際、作品内容は審査項目ではありません
3.公金は「あいトリ」とか「国際現在美術展」というイベントの枠で支出承認されており、個々の作品をチェックして支出を決めたのではありません。
4.よって「作品に税金を投入した」のでもなく「虚偽申請」もしようがありません。

1.「表現の不自由展・その後」展示作品が決まった時期

 「表現の不自由展・その後」作品が決まった時期、あいトリに公金申請がされた時期は重要なポイントです。

 問題とされた作品の中で、天皇の映像作品の出展経緯は以下のようになっています。

【作品決定の時系列】

(1)平成31年5月 8日  天皇の雑誌の切抜きを利用したコラージュ
               作品を燃やす映像作品(「遠近を抱えて
               PartⅡ」)の出展打診
(2)平成31年5月27日  その後、出展辞退を経て、出品決定。
(3)平成31年6月 4日  展示作品の最終決定

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名古屋市ホームページ・「表現の不自由展・その後」にかかる経緯より

2.名古屋市への公金申請から承認まで

【公金申請時系列】

(1)名古屋市議会で予算承認(3年にわたり毎年実施)
(2)平成31年3月27日
   あいちトリエンナーレ実行委員会運営会議で平成31年度分の愛知
   県・名古屋市の負担金額を決定
(3)平成31年4月1日 名古屋市に負担金交付申請
(4)平成31年4月16日 名古屋市から負担金交付通知(決定)

1.の展示作品が決まった時期と照らし合わせると、公金の申請・承認が先であり、作品決定はそれより後、であることが分かります。

よって、作品を見て公金支出をしているのではないことは明らかですね。
そもそも、名古屋市分の支出は名古屋市が承認しているので、

(1)名古屋市議会で予算承認

 名古屋市の「文化芸術振興」予算の一部として承認

(2)あいトリ運営会議で負担金額決定

 2019年3月27日 あいちトリエンナーレ実行委員会運営会議において、あいトリの事業計画と収支計画、愛知県・名古屋市それぞれの負担金額を満場一致で決定しています。

 名古屋市長代理も出席しており、賛成票を投じています。

 「表現の不自由展・その後」は、あいトリの数ある企画のうちの一つですが、この会議での事業計画や資金計画は、あいトリ全体のものです。

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運営会議議案
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議案(事業計画と収支予算)

またこの会議資料として、同日に報道向けに発表されたプレスリリースが配布されています。

2019年3月27日 プレスリリース資料

(3)名古屋市に負担金交付申請

 (2)の決定を受けて、愛知県と名古屋市に公金支出申請(負担金交付申請)が出されます。

 表現の不自由展はあいトリの中の一企画ですが、この時の申請は、あいトリ全体に対しての申請です。作品内容まで細かなことには触れられていません。

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申請書(名古屋市ホームページ(資料14)
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添付書類1-1(名古屋市ホームページ(資料14-2.)
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添付書類1-2(名古屋市ホームページ(資料14-2.)
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添付書類2 資金計画(名古屋市ホームページ(資料14-3.)

(4)名古屋市から負担金交付通知(決定)

 申請内容がそのまま承認されました。

 決定通知書によると、この負担金の支払い日はあらかじめ決められており、作品を見て支払いを決定するという類のものではありません。

 また、「実績報告」については開催後提出するものですが、会計報告が主で作品を審査するものではないとのことです。

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負担金交付決定1(名古屋市ホームページ資料15.
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負担金交付決定2(名古屋市ホームページ資料15.

ちなみに名古屋市の負担金は、この交付決定の(4)事情の変更を根拠に、3回目をまるまる不払いとする決定をしました。
2022年5月の地裁で名古屋市は全額を支払うように判決が出ましたが、名古屋市は控訴することとしています。

3.申請内容から分かること

以上のことから、繰り返しになりますが、

・申請書に作品内容の記述はない。しかし、支出は承認されている。
・それは、名古屋市の公金(負担金)支出が、「あいちトリエンナーレ」と
 いう大きな枠の、事業計画・収支予算・予算計画で承認されているから。
・名古屋市が公金支出承認をしたのは4月16日。(この段階で展示作品は
 最終的に決まっていない。)よって、作品を見て公金支出承認をしたので
 はない。
・負担金の支払い日はあらかじめ決まっており、作品の審査が条件にはなっていない。

ことが分かります。