あいトリ 弁護士会からの河村市長への抗議声明まとめ

1.愛知県弁護士会

今回の「表現の不自由展・その後」の中止に至る過程において、8月2日、あいちトリエンナーレ2019実行委員会の会長代行である河村たかし名古屋市長は、同企画展の展示を視察した上で、企画展の作品について「日本国民の心を踏みにじるものである」と公然と批判し、大村知事に対して少女像などの撤去を求める要請をした。

 河村市長の発言と行動は、行政庁の長である市長が企画展の展示物である表現の内容に対して異議を唱え出品者の表現行為を止めようとするものであり、憲法21条2項との関係において適切さを欠くものである

https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2019/09/post-29.html

2.東京弁護士会

一方、河村たかし名古屋市長は、展示中止発表前日の8月2日、「日本国民の心を踏みにじる行為」などと述べて、大村知事に対し、展示中止を含む適切な対応を求める抗議文を提出した。しかし、公権力が、表現内容に異議を述べてその中止を求めることは、表現活動に多大な萎縮効果をもたらすものであり、到底許されるものではない。
 この点、補助金を支出していることから、公権力が介入することを肯定する意見がある。しかし、補助金の支出が特定の団体に有利になされるようなことがあれば格別、予め設定された基準や要件を満たしたとして支出された以上、個々の展示内容の選択については、専門家から成る実行委員会で決めるべきことであり、展示内容に対して、補助金の支出を根拠として公権力が中止を要求することは、まさに不当な政治介入と言うべきである。

3.東京第二弁護士会

企画展を巡っては、視察した河村たかし名古屋市長が「国民の心を踏みにじるもの」と話し、税金を使って公共の場所で開催することは止めるべきであり、作品の展示を即刻中止するよう愛知県知事に求めたことが報じられた。
 しかし、公権力を扱う立場にある者が、作品の内容に異議を唱えて中止を求めることが、表現活動に重大な萎縮効果をもたらす危険な態度であることは、表現の自由の重要性を認識する国民の多くがよく知るところである。同市長の発言は、個人的な不快感を「国民の心」に置き換えた不遜なものとの誹りを免れない。

4.滋賀弁護士会

公権力を行使する要人は、その立場に鑑み、国民の表現活動を萎縮させることのないよう、その言動には十分注意を払うべきである。特に企画の中止を求めるような発言は、表現の機会自体を奪おうとするものであって、憲法の理念を理解しない態度というほかない。

一連の発言の中には、補助金の支出に言及するものもあった。それもまた政府等が補助金の支出のあり方を通して一定の内容の表現活動の場を奪う旨の姿勢を示したと受け取ることのできるものであった。しかし、政府の見解に沿う表現活動にのみ補助金を支出することには重大な問題があることを理解しておく必要がある。政府の方針に沿うような書籍ばかりが図書館に並ぶような事態を想像すれば、予算を盾に表現活動に介入することの危険性はよくわかるであろう。

公権力を行使する要人としては、たとえその内容が個人的な主義主張に反するものであったとしても、展示の内容の適否についての発言を自重し、むしろ、展示を攻撃する過激な言説に対して冷静を呼びかけ、必要な警備体制をとって表現の機会を護ることに尽力すべきであったと言わなければならない。

5.岐阜県弁護士会

他方、河村たかし名古屋市長は、展示中止発表前日の本年8月2日、「日本国民の心を踏みにじる行為」などと述べて、大村知事に対し展示中止などを求める抗議文を提出するとともに、再開にあたっても会場前で座り込むなどして、反対した。

  言うまでもなく、表現の自由は最大限保障されなければならない。公権力が、特定の表現行為の、しかも内容に批判を加えてその表現の中止を求めるということは、表現の自由に対する萎縮効果を及ぼすものであって許されない。

河村市長の上記の行為は、まさに公権力が表現の内容に踏み込んで批判するものであり、表現の自由に対する不当な萎縮効果を及ぼしかねない。さらには、その表現に直接触れたいと考える住民の権利及び作者の作品を展示する権利をも奪いかねないものであって、許されない。

河村市長や文化庁の一連の対応は、このような表現の自由に対する過度の制約を助長するものであり、表現の自由を保障した憲法21条1項や検閲の絶対的禁止を定めた同条2項の趣旨から許されないものである。当会は、河村市長及び文化庁に対し厳重に抗議するとともに、国及び全国の地方自治体に対し、改めて、表現の自由を最大限保障するよう要請するものである。

6.仙台弁護士会

また,「表現の不自由展・その後」での「平和の少女像」や昭和天皇をモチーフにした作品の展示に対し,8月2日,「あいちトリエンナーレ」実行委員会会長代行でもある河村たかし名古屋市長は,「日本国民の心を踏みにじる行為」であるとして展示の中止を求め,9月2日には「あいちトリエンナーレ」開催経費の名古屋市負担分の不払いの可能性を示唆した。
「あいちトリエンナーレ」のような大規模な国際芸術祭の開催は行政からの資金援助(負担金,補助金等)が不可欠であるところ,河村市長のような負担金等の公金支出につき法令上の権限を有する権力者が,特定の作品の展示の中止を求め,又は展示内容に介入するような発言をすることは,自己の思想信条と相容れない内容を含む作品の展示の機会を権力者の恣意的判断によって奪う圧力となりかねず,表現者に対する萎縮効果を招く不当な政治的介入であり、表現の自由の侵害である。
公権力者のこのような発言を許すことは,自己の思想信条と相容れない表現活動を正当な言論等によらないで排除しようという動きを助長しかねず,市民にとって重要な意味を持つ自由・人権が深刻な危機にさらされることになり,容認できない。

 よって,当会は,「表現の不自由展・その後」が暴力的な言動によって中止に追い込まれたことに重大な懸念を表明し,河村市長の発言に対して抗議する。

7.福井弁護士会

2 名古屋市による展示中止要求に抗議する
(1) 名古屋市(河村たかし市長)は,本件芸術祭実行委員会に対し,本件企画展の展示中止発表前日の8月2日,「日本国民の心を踏みにじる」などとして,展示中止を含む対応を求める抗議文を提出した。しかし,「日本国民の心を踏みにじる」という評価は,同展示の表現に対する多種多様な評価の一つのみを恣意的に取り上げるものに過ぎず,実行委員会の一翼を担う自治体が,特定の価値観にしたがって展示を打ち切るよう求めることは,表現の自由を脅かす行為である。
(2) 公金の支出を理由としてこうした行為を正当化する言説があるが,例え公金の支出を伴う事業であっても,他者に対する人権侵害の防止や関係者の安全確保の差し迫った必要性が認められる等の合理的理由もなく,一旦決定した表現行為に対する公的援助を,表現内容に着目した恣意的な理由から打ち切ることは,表現の自由の侵害にあたる。
行政が,公金の支出を理由に,表現行為の内容を評価して恣意的に選択し援助の可否を決定できるなら,公立図書館から行政の意に沿わない図書が消え去る危険が生じるが,それがわが国の民主主義に重大な危機をもたらすことは,誰の目にも明らかであろう。
(3) よって,当会は,名古屋市に対し,表現の自由を脅かす本件企画展の中止要求に対し,強く抗議する。

8.金沢弁護士会

第2に,地方自治体の要職者による本件展示に対する言動には問題がある。

 今回,地方自治体の要職者が,公的助成を理由に,本件企画展の内容への批判を口にするようなことが見られた。

例えば,実行委員会運営会議の会長代行でもあった名古屋市長が,マスコミの取材に,本件企画展に対し「どう考えても日本国民の心を踏みにじるものだ」と発言した上,公金が支出されることへの否定的見解を示し,その後,本件企画展の中止を求める抗議文を提出するということがあった。

こうした言動は,憲法の「表現の自由」を保障する趣旨とは相容れないものといえる。

「表現の自由」の保障の下では,公権力が,文化芸術活動の表現活動の内容に着目して不当な干渉を行うことは許されない。それは,公的助成がなされる場合にも当然に妥当することである。公的助成は,市民に多様な表現行為に触れる機会を提供するために行われるものであって,公的助成をする立場の裁量があるとしても,その行使が表現活動の自主性を損なうものであってはならない。公的助成の主体は,助成に当たっては表現活動の内容に介入しないという態度を貫くことが求められている。

名古屋市長の上記言動は,本件企画展中の特定の作品の表現内容に着目して否定的評価を示し,公的助成の対象とすべきではない,というものであり,表現活動の内容に介入しない態度とはいい難い。

9.京都弁護士会

また、この企画展に関して、河村たかし名古屋市長は、展示中止発表前日の8月2日、「日本国民の心を踏みにじる行為」などと述べて、大村知事に対し展示中止を含む適切な対応を求める抗議文を提出した。しかし、公権力が、表現内容に異議を述べてその中止を求めることは、表現活動に多大な萎縮効果をもたらすものであり、到底許されるものではない。

10.兵庫県弁護士会

企画展を巡っては,同実行委員会会長代行であった河村たかし名古屋市長が, 会長である愛知県知事に対し,展示中止発表の前日に「日本国民の心を踏みにじ る行為で,行政の立場を超えた展示が行われている」などとして「展示中止を含 めた適切な措置」を求める抗議文を提出し,作品の展示を即刻中止するよう求め た。 上記の河村市長の発言は,実行委員会会長代行としての発言とはいえ,市長と いう公権力を扱う立場にある者が,作品の表現内容を理由として展示中止を求め た行為であり,市民の表現活動に重大な萎縮効果をもたらすものである。河村市 長の発言は,その立場を考えても,表現活動に重大な脅威であり,極めて軽率で あると指摘せざるを得ない。