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幼保園のリレーを通して経験していることと経験して欲しいこと

秋は、運動会を行う園も多いのではないでしょうか。
運動会で盛り上がりを見せる競技といえば、リレーですね。
私の園では、年長児の競技にリレーがあります。
リレーという競技の目的を、あなたはどう考えていますか?
リレーという競技に参加することを通して、子どもに経験して欲しいことはどんなことでしょうか?

リレーという競技への興味と理解の過程


幼稚園、幼保園、保育園に通っている子ども達は、日々の園生活(集団生活)の中で他学年の遊びを見たり、興味を持ったりする機会があります。(という前提で考えてます。)
その中で、年長児が遊びの中でリレーをやっているのを見て、年少児、年中児が「お兄さん、お姉さん何をやっているのかな?」というような気持ちで興味を持った時に、様子を見ている(ように見えるけど、心の中で色々思ってる場合あり?)、リレー遊びの中に入って一緒に走る(一緒に走れて楽しい〜、皆に注目されて嬉しい〜というような気持ちから?)、並んでいる列に参加する(順番で走るというルールを理解してるからこその姿?)、バトンを持ちたくてバトンを持つと嬉しそうにして離さない(バトンの特別感が魅力的に見えて仕方ない?)、などなど、年長児のリレーを見ながらその子なりに学ぶ機会があるわけです。

年長児で見られる育ち


そんな経験をした子どももしてない子どもも年長児の運動会が近付いてくる時期に、リレーのことを考えることになります。
クラスで共通理解しておきたいリレーのルールを以下のようにしたとします。
①1人最低1回はバトンを持って走る
②バトンを次に走る人に渡す
③複数のチームで走り、早くゴールしたチームから順位が決まる
➃ひとチームで走る人数は揃える
⑤走るコースを決める

年長児となると、ただ走ることが楽しくて走る年少児、自分がバトンを持って走りたくて走る年中児とは違う成長を見せていることが多く、上記のシンプルなリレーのルールを自分なりに理解して走ることができるようになっている子どもが多く見られます。

リレーを通して子どもが経験できることは何だろう?


・勝つ喜び、負ける悔しさを感じること
・勝つためには、どうしたらいいか考えること
・ただ走るから目的の為に早く走ることを考えること
・バトンを次の人につなぐ為に自分の力を発揮すること
・自分の為だけではなく、クラスの為に自分が出来ることを考えること
・友達の気持ちを考えること
などなど・・・他にもたくさんありそうですが、保育者が何を経験させたいかによって、リレーを通して子ども達に伝えることも変わってきます。


子どもに任せてみる


当たり前ですが、リレーは走る順番を決める必要があります。
どうやって決めるか・・・、じゃんけん、くじ引き、競争、話し合い、大人が決める・・・などなど、方法はたくさんありますが、何を経験させたいかによってその方法も変わってきます。

走るのは子どもです。
“子どもが自分で選んで決めた順番の中で、クラスの為に自分の力を発揮する”という経験をして欲しいなぁと考えると、順番決めも子どもに任せる、という方法も悪くなさそうです。
ただ、そこは年長児とはいえ5歳の子どもです。1人ひとりが“順番”を理解できるように伝える必要はあります。
そうすると、好きな番号で決める、友達同士でバトンを受け渡すことを考えて決める(●●ちゃんに渡したい。●●ちゃんからもらいたい。)、一番最初に走りたい、一番最後に走りたい(アンカーを特別に感じている)、順番にこだわらない、などなど、子どもなりに考える姿が出てきます。

複数人が同じ順番を希望したらどうしよう


同じ順番で複数人が走ることはできない、というルールを理解しているかどうかを確認した上で、1人に決めていきます。
そこで、決め方をどうするか考えることになるのですが、“自分の気持ち、相手の気持ちを伝え合った上で納得して決める”という経験をして欲しいなぁと考えると、決め方も子ども達に任せる、という方法も悪くなさそうです。
ただ、やはりそこは年長児とはいえ5歳の子どもです。保育者が側で見守りながら、援助が必要な場合もありそうです。
互いの主張を伝えあった中で、互いが譲れなくて困っているようであれば、何かしらの方法で決める必要があると思うので、じゃんけん等の勝敗がつくゲームやかけっこの速さ勝負や運を天に任せるようなクジ引き等、いくつかの方法を提案してみます。
やはりここでも子ども達が納得して決める、ということに拘りたいところです。

順番を決める過程で見える保育者の想い


保育者が“子ども達が納得して決める”ということに拘るということは、“子ども達の中で決める力がある”と信じること、とも言えます。
または、今までの保育の中で“子ども達の中で決める力を育ててきた”という保育実践をベースにした自負もあるかもしれません。
更に、その過程の中で見られた姿から、その子の育ちつつある力を改めて感じる(観察する)ことで、その子に経験して欲しいことが明確になり保育を考えることに繋がるかもしれません。
“子どもに任せる”というのは、放任ということではなく、“子ども同士の関係性や背景なども踏まえながら、1つの答えを出すまでの過程を子どもに任せつつ、子ども自身が納得した答えになるように援助する”と言えるかもしれません。

順番の希望が通ること、通らないことがある


走る順番を決める時、アンカーに強く拘る子どもがいます。その子の心の中にはどんな想いがあるのでしょうか。
5歳児から見ても、アンカーは花形に見えるのかもしれませんし、兄や姉がアンカーで走っているのを見て、憧れを持っているのかもしれません。
もしかしたら、家の人にアンカーで走ることを期待されていることを感じて、アンカーを希望しているのかもしれません。
アンカーだけではないかもしれませんが、その順番に強い想いを抱いている子どもが複数人いた場合、ルール上、その順番で走れる人と走れない人が出てくるわけです。
希望が叶わなかった子どもは、自分が納得した方法で決めたとしても、悔しい思いをします。
想いが強ければ強いほど、早く走る為に自主練をしていたり、早く走る為に研究していたりする子どももいて、希望が通らなかった時の葛藤が大きいものになることもあります。

葛藤体験はしなくてもいい経験なの?


悔しいという想いを泣いたり、登園を渋ったり、リレーに対して意欲が出なかったりなど、様々な形で表現する子どもに対して、どう関わるかは、やっぱり何を経験して欲しいかという大人の想いで変わりそうです。
“クラス全員でバトンをつなぐ為に、自分の力を発揮することが大切ということを感じる”経験になって欲しいなぁと思うと、どんな援助ができるだろうかと考えることができます。
ここで、想いが通らなくて葛藤している子どもの姿を“可愛そう”“不憫”と捉えてどうにかしてあげたくなって、アンカーを増やす、アンカーを変えて数回リレーをやる(運動会当日の話です)、などルールを変えてしまうような方法を大人が考えて収めてしまう方向にしてしまうと、せっかくの葛藤体験から得られることは、“大人がなんとかしてくれる”というものになってしまうかもしれません。
“早く走りたいと思って、自分なりに努力するという行動をとった経験”
“真剣勝負に向き合う経験”“真剣勝負だからこそ、負ける悔しさを味わう経験”“友達が自分の気持ちを考えてくれた経験”“自分以外の友達、クラスのことを考える経験”“葛藤を乗り越える経験”などのような経験の中に、子どもの育ちに繋がるチャンスが散りばめられていると考えることができます。
すると、その子の悔しい気持ちを十分に理解し、同じように悔しがったり、その子が前を向けられるまで信じて待ってみたりという援助を考えることができそうです。

1人ひとりの子どもは違うので、ここで書いているように簡単ではない場合も多々ありますが、それも保育者にとっては必要な経験ですね。
子どもに教えられながら、保育者も育つことができるのかもしれません。

運動会当日の経験


子ども自身が納得して決めていく過程やクラスの為にバトンをつなぐ、バトンをつなぐ為に自分の力を発揮するという目的を1人ひとりの子ども達が共有していく過程の中に、子どもの世界ならではのドラマがたくさん繰り広げられ、当日を迎えます。
当日も、バトンを渡したかった友達が休みになった、バトンが思うようにつながらなかった、気持ちが前面に出て転んでしまったなど、様々なドラマの中に色んな感情が湧き出る経験になると思いますが、それは過程の中でどんな経験をしてきたかで変わってくるかもしれません。

子どもにどんな経験をして欲しいのか


子ども自身の中に育つ力は備わっていると考えますが、その力の育み方は保育者の想いに影響を受けることも少なくないように思います。
今回は、子どもの園生活にフォーカスして運動会のリレーを例えに書いてみましたが、子どもの育ちの過程の中では、保育者と保護者の連携も大事に考えたいことの1つです。
園生活(集団生活)の中で見られる子どもの姿と家庭の中で見られる子どもの姿は必ずしも同じではないので、そこを保護者の方にどう分かってもらうか、なかなか簡単ではないですが、どうしたら伝わるかは考えていきたいことです。

おまけ


私の園では、保護者の方に子どもが園生活の中で、どんな経験をしてどんなことが育っているのかなどを伝える方法として、写真を使ったドキュメンテーションを作成しています。
ドキュメンテーションの作成方法や活用方法を保育塾のオンラインサロン“VIREVA”でお伝えしています。
ご興味がある方は、noteの記事をチェックしてみてくださいね。
“オンライン保育塾VIREVA”のリンクはこちらです。

https://note.com/forhoikusha/membership


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