インバウンド旅行者向けのツアーを作ってみたら Part 4
インバウンド旅行者向けのツアーを作ってみたらシリーズ その最終回4回目です。
1 Clarity
2 Relatable
3 Freedom
4 Flexibility
4 Flexibility
これこれ!これが言いたくて私は今回のシリーズを書いたんですよ、と言っていいぐらい、私が強く伝えたいメッセージの一つがこれ。柔軟性を持つ、ということについてです。
ここではオーストラリア出身のお友達の体験をもとにしてお話ししますね。
日本国内を旅していたオーストラリア出身の彼女。JRパスは自由に新幹線を使えるので海外の方にはとても人気。このパスを利用して日本国内を自由に移動していた時のこと。自由席にしか座れない彼女のパスで、自由席に向かって(1、2号車という一番前のあたりにあるからね)車内を移動していたのですが、自由席までまだあと車両を永遠と歩き続けないといけない、でも降りる次の駅まであと5分程度だと気づいたらしいです。その歩く途中グリーン席や指定席には空席がいっぱい。到着までたったの5分だし、途中もうこの列車は停まらないし、見渡す限り空席だらけだし、さらには大きなスーツケースとバックパックを押しての移動。もうどう逆立ちしてもこの席が埋まることはないと判断した彼女は、空いてる指定席にちょこんと座ったらしい。
そこで登場、車掌さん。「この席は指定の切符を買わないと座れませんよ」と日本語と英語とジェスチャーの混じった会話を二人はしたらしい。
ここまで読んでみて皆さん、どんな感想をお持ちでしょ?「当然やん」「新幹線って歩いて車両を渡るの、確かにしんどいよねー、私も経験あるある」「まあ仕方ないよね」のあたり?私はそんなことを考えながら彼女の話を聞いていました。
でもね、彼女の言い分はこんな感じ。
I know it's a rule, I know I didn't have a ticket. But hey, it's all empty. Japan has too many rules. TOO MANY RULES!
この too many rules いうのはよく聞くセリフ。日本の文化を体験した海外の方がこのセリフをため息と苦笑を交えて口にされます。私ら日本に住んでいる者も、これは日々感じますもんね。
この話を聞いてから、私はrulesについて考えるようになりました。日本のルールはどこからくるのか、なぜみんな守ろうとするのか。またそれがなぜ堅苦しく海外の方には感じるのか。
私は日本人の美徳の一つはこの「規律を守る」にあると思うようになりました。これだけの人口を抱える国で犯罪率が低く、安定した経済と政治、高識字率が揃っているのは、この規律を守る国民性によるものかな、と。その一方でその規律を守ることと私たち個々の幸福度は別ものであるのも感じています。縛られると抵抗したくなるのが人間だし、それぞれの違いを認めるダイバーシティーというのが今は大切にされる時代だしね。
またもう一つ感じているのは、ルールはルール、守るのが当然。でもその一歩先のところで人と人の繋がりの価値を考えてしまいます。もし彼女の体験を私がアメリカやヨーロッパでしていたらどうだっただろう、と考えたときに、お茶目な車掌さんならウィンクの一つでもして「もしこの指定席のお客さんが来たら、席を譲ってね」と一言かけて過ぎ去っていくだろうと思うんですよ。いつもそうなるとは限らないけれど、確かによく似た経験私もあるし。これって車掌さんという人間と乗客の人間が、人と人としての温かみや繋がりを感じる経験だと思うんですね。それが私たち人間が生きている上で求めている究極の「幸福感」じゃないの?って思うことさえあります(ちょっと大げさ?)。
車掌さんは置かれた立場で当然の行動をされていて、またオーストラリア人の彼女もルールを理解している。でも小さな人の心が通い合うやりとりが、旅の素敵な思い出だったり、さらには日本という国の印象が大きく変わるチャンスを秘めていると思うんです、私。日本の空港を飛び立つときに、この経験を具体的に思い出さなくても「あー日本っていい国だったよなー。この国ではいい触れ合いがあったよなー。また今度は家族も連れて来ようっと」って思ってもらえたら、最高ですよね。それがインバウンド産業の何よりのマーケティングだし、語弊を恐れずにいうなら、世界が平和につながるための素晴らしい貢献だと私は思うのです。
じゃあ通訳ガイドの私がその場にいたら、どんなことができたでしょうか?車掌さんに喧嘩を売る醜態は別の機会に置いといて、おそらく彼女の荷物を手伝いながら車両を移動したでしょうね。その後この状況を上手なジョークに変えながら、ここで触れた日本の文化・美徳・日本も変わりつつある、なんていう日本文化論の講義にさせていただくかな?その英語力を備えておかないと、ですね。
5月から「通訳ガイド養成オンラインワークショップ第2弾」を実施いたします。「今が準備に最適の時期」という声や「いや、まだまだインバウンドは戻ってこないよ」という声などなど、インバウンド観光業界にいる皆さんの耳には届いていることかと思います。そんな皆さんに私がお伝えたいのは、まずはやりましょう、です。周りの声に惑わされずに、まず今できることを実践する、これが私の今年の目標。通訳ガイド養成オンラインワークショップに参加いただいた皆さんにも同じ気持ちで、英語のポリッシュアップを実施しましょう。ここで英語力・ガイド力をアップしてどんな状況がきても対応できるガイドになれるよう、まずは今できることをやりましょう!皆様のご参加をお待ちしています。williamsmorikawa@gmail.com