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公平であるが平等ではない、クルーズ客船という生活環境

何百人、船によっては何千人というクルー(船員)が共に生活を送り働いている環境、
それがクルーズ客船である。
ここでは、様々な人種、そして、様々な文化背景を持ったクルーが同じ言語を話し、同じルールの下で暮らしている。

クルーズ客船ほど多様性を受け入れている職場はないのではないかと思う。
ここに、世界が1つになる未来を見出しかけたこともある。
ここでは、ルールの下、誰しもが公平に扱われる。

最高責任者であるキャプテンであろうと、末端の職種のクルーであろうと、ルールを守らなければ、船から降ろされる。それは、クルーだけでなく、ゲストも同じである。
ルールの下、人々が公平に扱われる場所、それがクルーズ客船という環境である。

今回の話は、船で働くクルーの生活に目を向けた内容である。

タイタニック号が氷山にぶつかり沈没するまで、船員を守るために整備された規則は皆無といって良いほどなかった。
それぞれの国によって、それぞれの国の基準で定められたルールはあったものの、その基準は大きく異なっていた。
多くの死者を出しがタイタニック号事件をきっかけに、海洋上での世界基準の規則が作られた。

その後、幾度かの海洋事故で多くの犠牲者が出るたびに海洋上での規則が新たに作られ、クルーたちの権利と労働環境が改善されていった。

今では一律して、1日の労働時間の上限は14時間、1日10時間以上の休息が取ることが義務付けられ、週の最長労働時間は77時間と定められている。
給与体系は、職種によって分かれているため、一概には言えないが、
いわゆるブラック企業のようなお金のつかない残業はないと言える。

そもそもが固定給の職種が多かったり、歩合給で労働時間と給与が関係ない仕事も多い。

クルーズ客船で働くクルーは、船に乗っている契約期間中毎日働き、船を降りた後にまとまった休暇で休むという生活を繰り返している。
船に乗っている間は、仕事と休みの厳密な境目がないと言える。

家族や友人の元から離れ、ここで働くと決めた理由は皆それぞれだろうが、
ここで働き続ける一つの理由は、職種や性別、人種、国籍で区別されない公平な環境であると言えるだろう。

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