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クリエータ紹介①:石山遼さん・後藤汰誓さん - 折り紙とプログラミングの融合による新しい体験の創造

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、一見異色の組み合わせ、「折り紙」と「プログラミング」の融合に挑む石山さん・後藤さんのストーリーをお伝えします。

左)後藤汰誓さん、右)石山遼さん

プロフィール

  • プロジェクト名:『Orimetry』作成ライブラリ『Orimetry.js』の開発

  • 支援プランと期間:Grow(23年8月~10月)

  • クリエータ:石山遼さん(九州大学 工学部 電気情報工学科 計算機工学課程 4年生)、後藤汰誓さん(九州大学 芸術工学部 音響設計コース 3年生)

これまでの歩み、来歴

石山さんと後藤さんの出会いは熊本高専の寮生活にさかのぼります。高専時代、彼らは寮の先輩後輩の関係で、高専卒業後に九州大学に編入。現在、石山さんは工学部で計算機工学を、後藤さんは芸術工学部で音響設計を学んでいます。

彼らが現在、プロジェクトを共にするきっかけを問うと、「寮の文化祭で、出し物(出店)の企画に一緒に携わった」思い出について話してくれました。後藤さんは、出店のプロジェクトで必要になる事務作業を石山さんが軽快にさばく姿を見て、「たくさんの仕事を素早くこなす凄い人だな、僕にはできない」と感心したと言います。一方の石山さんは、後藤さんが次々にユニークなアイデアを出すことに驚嘆。後に、福岡未踏について知った石山さんから後藤さんに「一緒に何かやろうよ!」と声をかける大きな理由となりました。

プロジェクトの概要

彼らのプロジェクト『Orimetry』は、生成的アートの手法を用いて、一風変わった折り紙のデザインを生み出すもの。ランダムな要素を取り入れたプログラミングにより、従来の折り紙にはない・人間の発想ではなかなか思いつかないユニークな形を作成できるエディタと、補完するライブラリを生み出しました。折り紙とITの融合から生まれる新しい価値や体験の探求と言えます。

プログラミングによって作り出された形は、レーザーカッターで切り出し、現実に折ることもできます。彼らは、福岡未踏でプロジェクトに取り組んだ3ヶ月間の中で、福岡天神にあるエンジニアのためのコワーキングスペース「Engineer Cafe」でイベントを行い、ユーザーに『Orimetry』がもたらす体験を試していただくところまで到達しました。

成果報告会の様子

福岡未踏への応募理由

福岡未踏への応募は、何か新しいことに挑戦したいという彼らの探究心から始まりました。特に後藤さんはメディアアートに興味を持ち、折り紙工学研究者が手がけたアートに触れる機会もあったことから、折り紙という伝統的な文化に新しい価値を加えることに魅力を感じたようです。石山さんも、後藤さんの持つユニークなアイデアに対する好奇心と、何かを成し遂げる喜びを求めてこのプロジェクトをリードしました。

彼らがこのプロジェクトを思いついたとき、確かにワクワクするアイデアではあったものの、福岡未踏に採択されるプロジェクトという観点でもっとも大きな壁と感じたのは「社会の役に立つものではない」ということでした。彼らは、メンターの中で、とりわけアートや美的感覚を意識した研究をされている方をターゲットと定め、その方に向けて提案する気持ちで準備を進めたと言います。「人の役に立つかどうかではなく、社会に新しい価値を生み出すかどうか。これこそが未踏だと自分たちは解釈しました」そう話す後藤さんの眼差しは、このプロジェクトのアイデアに対する自信に満ちていました。

福岡未踏で過ごした3ヶ月間を振り返って

「3ヶ月間ずっと、メンターと一緒に、草をかき分けて進んだ感じ」後藤さんはそう振り返ります。もともと、後藤さんも石山さんも、折り紙に関して詳しい知識を持っていたわけではありません。プロジェクトが採択されてからも、「どうすればより良いものができるか」を、メンターの方を交えて考えていく日々だったそう。振り返ると、そのプロセス自体が良い経験になったと感じているそうです。後藤さんは、プロジェクトを通し、「分からないからこそ、自分が持つリソース・武器を最大限に使って価値を作っていくことが重要だ」ということを学びました。また、なにかに取り組んでいく際の最初のハードルを下げることにも繋がったと言います。

石山さんは、「プロジェクトを通して多角的な見方があることを学んだ」と語ります。『Orimetry』は、適当に折った形もアウトプットできますが、たとえば出来上がった作品を見ても、「魚に見える」「車に見える」と人によって感想はさまざま。「プロジェクトを通して学んだことは多く、まずはやってみる・行動してみることが大事だと再実感した」と語る石山さんですが、そういった「多角的な見方」について『Orimetry』のプロジェクトから教わったと話すのが何よりも印象的でした。

後藤さん 成果報告会での発表の様子

おわりに

石山さんと後藤さんは、お互いへのリスペクトを持ち、伝統と革新、アートとテクノロジーが交差するプロジェクトを成し遂げました。彼らは、ただ革新的なアイデアを形にするだけではなく、彼らの知識と技術を最大限に活用し、新しい価値を創造することに挑戦しました。今後も続く彼らの人生において、未踏領域を軽やかに切り開いていくことに期待したいですね。

担当PM 一番左)福嶋政期氏、一番右)服部祐一氏とお二人

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。

(文:五十川慈)