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Test Driveの最後のサビ前が良すぎたのでベタ褒めだけする


Test Driveの最後のサビ前の流れ、良すぎないか????????


 タイトルと全く同じ事をでっかく言ってみただけだが、今日はTest Driveの最後のサビ前の数十秒の話をする。音源の秒数で言うなら2:12~2:38である。
 まずこのTest Driveという楽曲だが、平坦に進んだかと思えば一気に盛り上がったり、軽快に進んだかと思えば少し切なさを醸し出してきたり、色んな展開が見え隠れしている曲だ。この展開の多さというのはスポーツには付き物となる攻守のせめぎ合いだったり均衡が崩れて得点が動く様にも通じるものがあるだろう。楽器の数や種類もコロコロと変わるのも特徴だ。ただ、盛り上がりもある楽曲だからといってうるささを感じる程でもなく、そこは耳に残るようにと上手く調整されているように感じる。
 聴いた第一印象としては、思っていたよりもエモーショナルに訴えてくるところがある、という点だ。そのエモーショナルさを主に感じたのが、前述の2:12~2:38である。

 まず、サビの終わりが一番の「君とずっとTest Drive」ではなく、「君とずっと」でロングトーンを鳴らして「まだ言いたい事があるぞ」と次に繋げている。そして繋がった先で急に叙情的なメロディーが展開されていく。ここのメロディーの掛け合いがどこかミュージカルっぽさを感じるのも面白いところだ。続いて、この部分の歌詞を書き出してみる。

トンネル抜けたら 見たことない世界が広がってるから
僕らならきっと目的地はいらないよ
この旅は続く
(Ah)Right now, right now now now now

 さっきまで「虎視眈々とChampionへ向かう」「準備は完璧 空いてるよ助手席」「勝利までアクセル全開」等々、元気でカッコつけた青年たちはどこに行ってしまったのだろうか。急に詩的で、まるでこの世界で僕の味方は君だけだ…とでも言うような雰囲気である。小気味の良い英単語の使用を控えているのもそう感じさせている。
 これは私の勝手な解釈だが、おそらくこのエモーショナルな箇所は、夢を目指す者・闘う者達が必ず持つ影の部分に共感を見出し、それも踏まえて応援する他者との不思議な関係を表現しているのではないだろうか。
 アイドル然りスポーツ選手然り、どんな人であっても上手くいく時もあれば失敗する時もある。スポーツ選手であれば、スランプにハマってパフォーマンスが落ちてしまったり、不運な怪我に襲われて離脱してしまったり、勝利が求められる状況で負けてしまって打ちひしがれたり。アイドルであれば、ブレイクしても人気が続かず低迷したり、自信を持って打ち出した曲のウケが悪かったり、大事な舞台で失敗をしてしまったり。威勢良く邁進しても時に膝をつき、辛酸を舐めてしまうのは共通だろう。その辛酸を味わうのは応援しているファンやサポーターも同じだ。
 応援している人達の今後は大丈夫だろうか、成績がついてくるだろうか、良いパフォーマンスを見せてくれるだろうか。応援される者がトンネルに入ってしまった時、応援する者もまたトンネルの中に入ってしまったように感じてしまうのである。
 つまり、応援する者は離れていたとしても認識されていなかったとしても、応援対象の状況に共感してしまう、そんな関係なのだ。これが近親者ではなく、一方的に顔や名前を知っていて投資をしている関係でも発生するのが「応援」の面白いところだろう。そしてさらに面白いのは、応援する側の人間はトンネルに入りたくないから離れるという選択肢がありながらも、一緒にトンネルの中にいる事を許容する者もいるという事だ(これは決して、離れる人間が薄情だと言いたいわけではない)。一緒に苦しむ事も厭わず、その先にあるかもしれない喜びを待ちたいからトンネルの中でも一緒にいる。それが暗闇の中の虚勢だったとしても、これを「愛」と言わずして何と表現すれば良いだろうか。
 歌詞の話に戻るが、この歌詞にある「僕」について、私は最初JO1や選手といった応援される者が主語だと考えていたが、これはファンやサポーターといった応援する者にも当てはめる事ができるだろう。どちらを主語にして考える事が出来るのは、両者の感情の重なる部分が表現されている証拠だと言ってしまっても良いと思う。
 血が繋がっていなくても、認識されていなくても、思ったような道を辿っていなくても。感情移入で傷つく恐れを抱えながらも信じた先にある栄光を分かち合う夢を叶えたいから、応援をする思いを止められない。そしてその応援が無数に繋がり、応援される者の体と心を動かして背中を押していくのである。そんな応援という事象の面白さをこの歌詞から勝手に連想してしまった。

 歌詞の感想はここまでにして、音の話をしていこう。私が聴いていて思わず唸ってしまったのは、2:22の「僕らならきっと目的地はいらないよ」の部分だ。感情を込めて歌い上げる中で、「目的地」の「地」の部分で和音の動きが少し変わるのである。
 色々調べたところ、この部分で鳴っている和音はディミニッシュという種類に該当し、曲の中に差し込む事で底から込み上げる感情やじわっと盛り上げる効果などを生み出す事ができる。ディミニッシュを入れなくても曲を進行させる事は出来るが、上手く差し込めるとさらに感情を揺さぶる事が出来るのだ。
 このディミニッシュを使っている曲の例を挙げると、LiSAさんのヒット曲である紅蓮華だ。サビの「ありがとう 悲しみよ」の部分で使われているらしい。

 Test DriveではE♭→Edim→Fm→G♭と音楽を進ませ、この後の盛り上げにただ繋げるだけではなく聴き手の感情を揺さぶろうとしているのだ。「目的地はいらない」という歌詞にリンクをさせているところからも、ここが一つの聴かせどころであるのは想像できる。
 また、この音楽の進み方はこの後の曲の展開を暗示している。2:31からシャウトのパートがあるが、音程を徐々に上げていって計4段のロングトーンを披露している。少し前の進行で匂わせ、最後に人間の声の張り上げで伏線を回収している…という作り方なのかもしれない。ここで高音を張り上げた後に低音のサビを持ってきて一度落とすのも面白さがある。


 Test Driveは一見すると聴く人を楽しませたい!盛り上げたい!という意図を感じるが、その裏では盛り上がる結果に至るまでの道のりに僅かながらに思いを寄せ、「トンネルの中にいた時間があるからこそ、今この素晴らしい瞬間があるのだ」と訴えかける楽曲なのかもしれない。トンネルに長くいればいるほど、抜けた瞬間の光は眩しく、景色の彩度は上がり、世界を見渡した心は躍るのである。VICTORY DISCOという企画にこれ以上に合っている曲なんてこの世には無いと言っても良いのではないだろうか。


つまり何が言いたいかというと、Test Drive最高。JO1最高。阪神最高。

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