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そーしゃるすなっくたね便り②-旅する「たね」とアセスメント

徒歩で旅行するひとのことを、「とほダー」と言います。自転車は「チャリダー」で、一輪車なら「イチリンシャダー」でしょうか。これはもちろん、バイクで旅をする「ライダー」をもじってこう呼ばれています。
何を隠そう、僕もその「とほダー」でした。北海道を徒歩だけで旅行したことがあります。なにせ北海道は広いので、2日間ずっと山中の道を歩き続けたこともあります。宿で一緒になったバイク乗りから「とほダー」という言葉を教えてもらった時は、「とほほ」の「とほ」かと思いました。
とにかく、旅は人を惹きつけます。あの「水曜どうでしょう」も「アラビアのロレンス」も、松尾芭蕉の「奥の細道」も、みんな旅の話です。

『月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり。船の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして、旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。』(奥の細道)
過ぎ行く年月は旅であり、生活そのものが旅である人たちがいる。旅の魅力に取り憑かれて、芭蕉は「とほダー」となり、約150日間の長い旅に出ることになります。
そういえば、福祉を表す英語「Welfare」も、語源は「よき旅」、生きるという旅をよりよくしていく、という意味があります。こちらも、人の一生を旅になぞらえているのですね。(近年では日々の生活に焦点を当てて、「Wellbeing」という言葉を使うのも一般的です)

旅をすると、たくさんのトラブルに見舞われます。切符をなくす、荷物をなくす(リュックを丸ごとなくして、手ぶらでバリ島に降り立ったことがあります)、道に迷う、疲れる。何人かで、連れ立って旅をしていると、どんな失敗をするか、どんな対処をするかで、その人となりが分かってくるような気がします。
普段とは違う状況に置かれることで、その人のことが分かってくる。「アセスメント(その人の特徴や状況をみること)」は、旅をするとよく分かってきます。僕の場合、どんなに個性的なメンバーで旅をしていても、一番最初に道に迷うのは僕です。いやはや。
そして、慣れない状況でトラブルに対処しているうちに、こんなこともできたんだ!ということがたくさん出てきて、旅が終わる頃には、色んな「発達」が見られます。「実は地図が読めた」とか「一人で寝れるんだ」とか。アセスメントと発達がいっぺんにできる「よき旅」が、Welfareの語源なのも分かる気がします。
もちろん、安心できる状態で旅ができることもとっても大切。安全に、遠くまで行って、芽を出す。それが「たね」の役割だと思うのです。

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