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ちのあつ 子育て修行中

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6歳と3歳の息子の子育て記録 どたばた多め。たまにじんわり。
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ふたりだっこは許されない

「もうあっちゃんなんて、きらい!だいっきらい!あっちいけ!」 夏休み半ばのある日、ちのはそう叫んだ。 昼寝から起きて、にーちゃんのやってるパズルを覗き込んだあっちゃんに。 あっちゃんを蹴っとばそうとしているちのを、はがいじめにしながら、私は少し驚いていた。 「きらいきらい、き、ら、いー!」 顔を真っ赤にゆがめてぶるぶる震えながら、ちのは連呼していた。 ああ、初めてこの子からこの単語を聞いた。 嫌いって、あっちゃんにむけて、言ったことなかった。 私はそのことに気づきもし

法事と行方不明の香川

三連休、だんなの実家がある山形で過ごした。 おじいさんの13回忌で久々の親戚大集合。 義実家での滞在や法事の作法、滅多に会わない親戚の方々との挨拶など、ずいぶん気疲れした。 でも、子供たちにはいろんな人と会える良い機会で、頑張って行って本当によかった。 人見知りがひどい長男が、叔母さんらに話しかけられて、ぽそぽそと返事をしているのを見るたび、来てよかったと思った。 「ちのくん、こっちより静岡のが暑い?」 「……うん」 「やっぱり〜。山形は夏休みよりだいぶ涼しくなってき

シシャモの恐怖

夕食にシシャモを食べた。長男の好物。 次男は「にがい」と言って、卵のみをほじくって食べる。残骸は私。 「あっちゃん、ほんとは頭からしっぽまで全部食べられるんだよ」 長男は自慢げにバリボリ丸かじり。 苦いものは兄のが得意で、辛いものは弟。 お互い得意分野の時は相手に見せつけるように食べる。 が、実は牛乳を飲んで苦味や辛味に耐えているのが面白い。 「今さ、シシャモがこれ見てたら、怖いだろうね」 箸でシシャモをつまんで眺めながら、長男が言う。 焼かれて一列に並べられた同胞。

泥の靴でピーマン持って、じんわり進もう

行き渋りの激しい小学二年息子の今週の登校記録。 月曜日 (4時間目のみ登校) 朝、久々に雨降っていない。 集団登校の集合場所に私だけ向かう。 7月ごろからずっと集団登校できていないので、他の子に会うのも久しぶり。なつかしい。ちょい大きくなった? 毎朝、登校班のグループラインに「先に行っていてください。よろしくお願いします」と送るのが苦だった。 家を出るべき時間になっても玄関から動かぬ息子。時計を見ながらなだめてすかして胃を痛めて。 タイムオーバーになるギリギリに、諦め

台所の毒りんご

夕ご飯の支度をしていた。 昼にうどんを茹でた鍋を放置したままだったので、洗うところからスタート。 透明なボトルの中で黄緑に輝く洗剤をワンプッシュ。 甘ったるい匂いが漂う。 お茶の香り、らしい。 今まで無香料のを使っていたのだが、最近気の迷いで購入してしまった。 鼻に侵入してくる一瞬、いい香りかも、と感じる。 心の中に鎮座する「欽ちゃんの仮装大賞の得点板」が、 ピ…ピ…ピ、ピピ、ピピピ、ピン と期待たっぷりに得点をあげていく。 音楽が盛り上がり、合格ラインを超えた!と思っ

うえでねる

夏休み明け二日目、小二の息子、学校欠席。 月に一度だけ自由に休める権利を二日目にして使ってしまう。 (「8月分の権利を使う」と言ってきたが、さすがに8月は短すぎるので9月と合体にした) 休むと決まったら長男はおだやかになり、私の苛立ちも消え、よい一日を過ごせた。 長男は自主的に自分の机の引き出しの整理をはじめ、いろんなものを処分していった。こちらから見るとゴミにしか見えないものがまだまだあったが、一つずつ思い出を語っては愛でていたので口出しはしなかった。 子供って宝物がい

夏休みおしまい

息子二人にエネルギーを吸い取られ続けていた夏休みがようやく終わった。 昨日は宿題の仕上げに追われて胃が痛く、今朝は予想通り行き渋る長男に胃がキリキリした。 (次男はすました顔でスムーズに登園してくれた。ありがたや) 7時過ぎに家を出るはずが、説得し、出発するのに10時過ぎまでかかった。 あの手この手を使いすぎて、結局どれが決め手かわからない。 村上春樹の『海辺のカフカ』に出てくる砂嵐みたいな毎朝。どうやって抜け出たのかわからない。成長してる気もしないが。 大雨警報の中

ミミズか、ロボか

夏休みに入って数日。 去年までは夏休みが近づくのが憂鬱だった。 子供らとべったりの日常が延々と続くのは大変。 (私がトイレに行くたび、長男にいじめられた次男が 「かーちゃん!どこ? だっこ!」と泣き叫ぶ…) でも今年は夏休みに入ってほっとした。 登校拒否気味な長男との攻防に心底疲れていたので。 夏休み、ありがたい。 夏休み明けのことは……考えたくない。 * 「うぃーん、がしゃ。うぃーん、がしゃ」 ロボット歩きで長男ちのが台所にやってきた。 「かーちゃん! 大変!  

はじめての歯医者さん

子供らがはじめて虫歯になった。 なにも、こんな、真夏に、兄弟、そろって、虫歯に、ならずともぉ… 炎天下。子供を前後に乗せた自転車。 荒い息で、考えても仕方ないことをぼやく。 あと数回は通わなくては。憂鬱。 せめてちょっと書き残しておこう。 * 子供らがビビるため、だっこで治療を受けている。 私が先に治療用イスに寝そべり、その上に子供が寝そべる。 ラッコのだっこ。 暴れぬよう、子供の両手を自分の手で包み込む。 何かされるたび、指をキュッと握ってくるのが可愛い。ぎゅっぎゅ

春休みが終わらない 【月曜日のたねまき】

ご無沙汰してます。 月曜日だし書かなきゃなと思いつつ、毎週流れていってしまう4月でした。 書いてなさすぎて最初、【月曜日の“ためいき”】とタイトルを書き間違えてしまった。 でも今の気持ちにぴったりで、無意識ってよくできてる。 * 長男の行き渋りが悪化してきて悩み中。 今朝は久々に通学班で登校できてほっとした。 でも給食前に早退して迎えにいくことになっている……。 土砂降りの大雨の中、自転車で行かねばなので気が重いです。 クラス替えや先生が変わったことで、不安が高まってし

人間の最終形態になる日まで

「人間の最終形態って、なんだと思う? かーちゃん」 自転車で坂道を下っていると、後部シートから4歳次男が問いかけてきた。 最終形態?? ポケモンの進化とかで覚えたのか? で、人間の、最終形態……? 下り坂は案外怖い。 でこぼこのコンクリや、太めの木の枝を避け、ブレーキを握りながら進む。 次男の突飛な質問に気の利いた答えを出す余裕がない。 「え……わかんない、なに?」 「死体」 「お……おお。  ……おお。」 意外な答えに「お」しか言えないでいると、 「人間の最終形態

「あたたかいとこ すわって、いっしょにテレビみよ」

怒涛の春休みが終わって三日目。 小学二年の長男はまだ学校。 年中さんの次男はもう帰宅。 次男と二人で楽ちんごはん。レンジでチンの明太子パスタ。 兄よりも辛いものが食べられることを誇りにしている四歳児は、たらこよりも明太子にこだわる。牛乳をごびごび飲んでは辛さに挑む。 兄がいないと大変おだやか。 カリカリせずに次男を見守っていられる。 一人前をつるりとたいらげた次男。名残惜しそうに皿を眺め、 薄桃色のソースが残る水色の皿を一直線に舐めた。 そこだけ水色がクリアに光る。海

ふぁみれ たのしいふぁみれだな

風邪気味で暇を持て余した子供らと、LINEスタンプを作った。 7歳長男のスタンプはシンプルな絵に、「OK」とか「ありがとう」など使用頻度の高い言葉。使い勝手がいい。 「それもあり」というスタンプがおおらかで特に好き。 4歳次男は普段絵を描きたがらないのだが、今回は兄につられてがんばった。 字はまだ書けないので、本人が口述した言葉を入力していく。 「けん かたいーな たべような」 「わぁ こわいな しかくちゃん」 「なんだこれのもとのもと?」 真顔で謎の言葉を連発する

ちいさくなったら

「ありっあり〜アリアリアリアリありっあり!」 幼稚園バスから降りてきた4歳次男は、先生に挨拶もせずに「あり」を口ずさんでいた。 ラップのような独特のリズム。手足もちょっと踊ってる。 今日もあっちゃんはごきげんだ。 「先生にさよならは?」 言わせようとしてる間に扉は締まり、窓越しににこやかに手を振る先生が遠ざかっていく。 「さよおならっ!ありっ!」 やっと挨拶した時には、バスのおしりが曲がり角に消えていくところだった。 「きょうね、ときが『ちいさくなったらなんになりたい?』