悪役令嬢ものを考察する

 これ細かい事を語る前に終わってしまうの。中世ヨーロッパに貴族の通う学校がない。中世の大学は司祭養成学校と官僚養成学校を足したようなモノで、法学か神学を学ぶ場所だった(これに医学が加わる)。次に王子と公爵令嬢との婚約が存在しない(終了)

 要するに、悪役令嬢ものは近世が舞台で中世ではないのだ。貴族が通う学校も男女共学も近世以降のお話だからだ。

 中世では、必要ならば家庭教師をつければ良いし、下流貴族なら他の貴族の家に修業に出す。

 そして婚約するとそのまま相手の家に送られる。つまり、婚約が成立した時点で相手の家に居る。

 婚姻は、家と家の間の契約で、貴族の婚姻には政略結婚しかないので父長命令が優先される。王子都合による婚約破棄はない。ついでに家柄は対等なのが望ましいため上位貴族ほど選択肢が限りなく少なくなる。そもそも王族と家臣そのものの婚姻が禁止されている国も多い。悪役令嬢もの大半は、公爵も伯爵と王子の組み合わせなので婚姻自体が認められない。要するにフランスやドイツにおいては王子と悪役令嬢と言うパターンがそもそも成立しない。ついでにドイツ王は、選挙で選ぶもので、そもそも王子が存在しないのだ。この様な結婚を貴賎結婚と言い、どうしても結婚したい場合は王位継承権返上になるケースが多い。

 恐らくこのルールが最も厳格に運用されたのはスペイン・ハプスブルク家だと思われる。相手が同格かつカトリックで有る必要があった。しかし、当時のヨーロッパにおいてスペイン・ハプスブルク家(スペイン王、ポルトガル王、ナポリ王を兼ねていた)と同格かつカトリックと言う家がフランス・ブルボン家、オーストリア・ハプスブルク家しか存在しないので近親婚が続くことになる。領土が広すぎて対等な相手がいなくなってしまったのだ。

 ヨーロッパの大国の中で、イギリスは例外に位置し、家臣との婚姻が割とあり、平民との結婚が認められているケースすらある。宗教上の問題さえクリアすれば良いのだ。しかし、アメリカ未亡人とのケースは退位の上、国外追放されている。いわく付きとの結婚はどこでも厳しい。

 一方、離婚も簡単にできた。キリスト教では離婚が禁止されていたが、裏技があり教会が婚姻無効を宣言するとその時点から結婚していない事になる。政略結婚なので、同盟関係が破綻すると驚くほど簡単に離婚している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?