数学チートに何を用意すれば良いのか?

 中世の幅が広すぎて意外に難題。まず中世ヨーロッパにアリストレスというか古代ギリシャの学問全般が再輸入される前と後で分ける必要がある。アリストレスはBC4世紀の古代ギリシャの人物で西ローマでは3世紀頃がアリストレス学派のピークなのだが、5世紀には忘れ去られている。ブリテン島に至っては文字すら消滅しているので、科学の大幅な後退が起きているのだ。それがイスラム圏から再輸入されるのは12世紀になる。つまり、イスラムでは維持されていたのだ。要するに西ヨーロッパの方が蛮族の巣窟で、イスラムの方が文明的だと言うわけだ。

 しかし、西ヨーロッパが完全な蛮族の巣窟に落ちなかった理由はキリスト教の功罪の功にあたる。聖書を読むには文字の読み書きが出来る必要があるため、ブリテン島以外は文字まで消失しなかったからだ。文字が残ることで最低減の数学も残っていたはずである。ユークリッド幾何学も一部残っている。要するに日蝕の計算が出来るぐらいでは異世界でもいきれない。

 再輸入以前ならば高校数学でいきれる気がする。特に統計学と確率論。数学の中で成立が一番遅い学問なので十分チートになりそうである。ただし、カジノから叩き出されないように注意する必要がある(実際にルーレットの出る目を統計して、大もうけした人が居るらしいよ。今では対策されているけど)

 ちなみに12世紀に複式簿記を持ち込んでもチートにすらならない。

 そして、再輸入以降の方がハードルも高く難題が多い。教会がアリストレス学派を絶対視したので、それ以外の学説を異端と扱ってしまったのだ。ガリレオ・ガリレイの地動説が受け容れられなかったのは無知蒙昧のせいではなく、教会がアリストレスを絶対視したからなのである。

 それでも再輸入後の数学の進化は著しく早い。微積分を持ち込んでも精々200年程度繰り上がるだけで、著しいチートとは呼べないぐらいである。それとても、オイラーが産まれていれば自力で実現されている可能性すらある。

 ちなみに再輸入以降は、特に代数学が秘術とされていた。彼らは問題の解法を仲間内で秘匿し独占していたのである。この独占が壊れるのが17世紀である。要するに数学は発達していてもその知識がまだ広がって居ないのだ。この代数学の独占の問題は虚数の発見が遅れた原因でもある。

 チートを持ち込んだ場合、教会とこれら算術家を敵に回す可能性を最初に気を付けないといけないだろう。

 それ以上に気をつけなければ行けないのはオイラー、ガウスに代表される数学星人だ、彼らは理論のさわりを聞くだけで数論を自ら作り上げてしまうのだ。生半可な知識で太刀打ちできるわけがない。

 要するに異世界で数学チートをしたいならアラビア数字を持ち込み、数学記号を統一し異世界のオイラーを探して基礎数学をたたき込むのが一番早そうである。

 あれ?

 だって、膨大な公式暗記するより天才数学者に証明ごと考えさせた方が早いんだもん。

 中世にはアラビア数字が普及していないのは、意外なチートポイントだがこのネタは既に使い倒されているので注意。

※ ラマヌジャンでない理由?確かに数学星人だけど、証明をかけないから数学の発展に寄与しない。発展させるには人間に分かる言語に翻訳できないといけない。そうしないと後に続かない。解読に100年以上かかる数式だけ残されても困るのだ。それでは太古の遺跡から発掘された魔道書と変わらないのである。ゆえにオイラーが一番の理想である。ガウスはそれに継ぐけど論文の発表をしない問題がある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?