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結束バンドさんの『星座になれたら』について

 ありがとう、『ぼっち・ざ・ろっく!』。

 結束バンドさんの1stアルバム『結束バンド』が邦ロック史に偉大な爪痕を刻むことについて異論を挟む人は最早いないでしょう。名盤とはハヌマーンの『World's System Kitchen』で、andymoriの『ファンファーレと熱狂』で、結束バンドの『結束バンド』です。
 私はと言えば、最近はぼざろの肌面積がデカい絵をインターネットから遠ざけることに命を懸けています。どうしてこうなった。

 「で、お前はどの曲が好きなん?」
 という切れ味が高い質問に対して、私はくどいほど予防線を引きながらも『フラッシュバッカー』を挙げますが、聴く回数に伴ってじわじわと火力を伸ばし、私のオタク心を炙っているのが表題の『星座になれたら』
 8話以降の私は一途にして敬虔たる"ぼ虹"の信者であり、今後もそうありたいと思ってますが、最終話にかけての"ぼ喜多"エネルギーには流石にブレインウォッシュされかけました。

 ギターソロに没頭する時の姿勢がぼっちちゃんと同じなの、愛だろ。


どんなに探してみても ひとつしかない星
何億光年 離れたところから あんなに輝く
いいな 君は みんなから愛されて
「いいや 僕はずっと ひとりきりさ」

星座になれたら

 最終回見終わって改めて歌詞読んだらマジで声出た。
 ぼっちちゃんから見ればキラキラ眩しくて要領もいい人気者だけど、特筆した非凡さがない空隙を自覚している喜多ちゃん。喜多ちゃんから見れば憧れのギタリストでバンドの危機も救ってくれたヒーローだけど、コミュニケーション能力に乏しく文字通り一人きりのぼっちちゃん。
 内心に陰を落とす各々の孤独があり、それ故にお互いの輝きを尊ぶことができるふたり。その輝きは、陰キャと陽キャの間に”何億光年”の距離があったからこそ、見上げた星のように目に留まって見える光だったのでしょう。
 「僕と君」というテーマこそ一般的ですが、そこに立場を入れ替えたダブルミーニングが丁寧に織り込まれた結果、容易にオタクをノックアウトする火力が内蔵されております。

だから集まって星座になりたい
色とりどりの光 放つような
つないだ線 解かないよ
君がどんなに眩しくても

星座になれたら

 各サビ前に散りばめられた出会いと別れに関するワードなどから、曲全体を通して感じる無常観。ずっと一緒なんて言葉は不確かな口約束で、まして眺める私と輝くあなたの関係であれば猶の事。
 だからこそ、星座に「なれたら」という願望だったものが、最後に「なりたい」という決意に変化を遂げるところが最高です。
 夜の地上から輝かしいあなたを眺めていただけの小さな私が「私も星になって、あなたと一緒に星座を成したい」という力強い意志を抱くに至るこのストーリーはギターのふたり、ひいては結束バンドが作中の大トリに演る曲として最適なんじゃないでしょうか。というか、劇中においてこの曲中でハプニングが起こるも支え合って(今回は喜多ちゃんを主軸に)ライブを成功させたという構図自体が、この物語の追想のようにも見えます。
 でもまあ、『フラッシュバッカー』で狂いたかった自分の存在は否定できない……。

 余談だけど、ラスサビの前には『遥か彼方』『カルマ』といったワードを置く目配せが印象的です。これはぼっちちゃんが作詞しているという前提に立った時、正直どう解釈したものかちょっと難しい。
 メタい視点で、この作品そのものからあの時代に対するファンメッセージなんだろうなと思ってます。
 この作品……邦ロックへの愛がデカすぎる!


 ぼざろロスに耐え切れず無事にKindleで全巻揃えましたが、一瞬で読み終えてより深い虚無に至っています。何より最新刊が割と最近出たっていう事実がつらい。でもこうやって余韻に打ちのめされ、続報に飢える体験ができるのも幸せなことだし、本当に見てよかったなあと。
 アニメ2期、そして結束バンドさんの2ndアルバムを心よりお待ちしております。

 原作再現、アッツ……。


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